「さきがけ・CERST」よりも、さらに若手の研究者育成を目的とした支援プログラム「ACT-X(アクトエックス)」をご存じですか?
今回の記事では、大学院生でも採択の可能性がある「ACT-X」について、その概要・応募要件・採択後の給与・日本学術振興会特別研究員(学振)との重複応募の可否など、気になるポイントを徹底解説します。(参考:JST「ACT-Xプログラムの概要」)
博士学生でも450万円~600万円の研究支援金を獲得できる可能性があります!
ぜひ最後までご覧ください。
ACT-Xとは?
ACT-Xとは、戦略的創造研究推進事業の一環として、独創的・挑戦的なアイデアを持つ若手研究者の「個の確立」を支援するネットワーク型研究プログラムです。
特に、研究者としての独立を目指す博士課程の学生や若手研究者にとって、貴重なファンディングの機会となります。
ACT-Xの特徴は、以下の通りです。
- 若手研究者の育成: 博士の学位取得後8年未満、または学士の学位取得後13年未満の若手研究者(大学院生を含む)を対象とする
- 研究費: 1課題あたり450万円~600万円程度の研究費が支援される
- 研究期間: 2年6ヶ月以内
- 多様な研究者ネットワーク: 研究領域内外の異分野の研究者と相互に刺激し合い、研究者ネットワークの形成を支援する
- 研究総括・領域アドバイザーによる指導: その分野のトップ研究者である領域アドバイザーがメンターとして配置され、きめ細やかなアドバイス・指導を受けられる
また、ACT-Xでは、個人型研究ながらも「ネットワーク型」の要素を重視しており、採択者同士の連携を促す場も提供されるため、学際的な共同研究のきっかけをつかむことも可能です。
ACT-X、さきがけ、CRESTの違いは?
ACT-X、さきがけ、CRESTは、どれも科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業が、ほぼ同じスケジュールで募集しているプログラムです。戦略的創造研究推進事業とは、社会・経済の変革をもたらす科学技術イノベーションを生み出す、革新的技術のシーズを創出することを目的とした、挑戦的な基礎研究を推進するJSTの事業のことです。
ACT-X、さきがけ、CRESTそれぞれの違いを簡単にまとめると、ACT-Xは若手研究者の育成に特化した小規模な個人研究、さきがけはより独立した若手研究者による先駆的な個人研究、そしてCRESTはトップ研究者が率いるチームによる大規模な研究ということになります。
「さきがけ」も年齢制限はないため、博士学生でも応募は可能です。(博士が採択された事例はこちら:京都大学基礎物理学研究所)
しかし、ポスドクを含めた自立した研究者と枠を争うため、博士がさきがけに採択されるのはかなり難しいと言えます。
なお、「CREST」はチーム研究なので、博士が間接的に参加することは有り得ますが、応募することは現実的ではありません。
ACT-Xに応募するための要件【大学院生も応募可能】
ACT-Xに応募するためには、以下の要件を満たす必要があります。
- 年齢: 博士の学位取得後8年未満、または学士の学位取得後13年未満であること(産休・育休期間を除く)
- 身分: 大学院生も応募可能
- 研究体制: 日本国内の研究機関で研究を実施できること
- 研究倫理: 所属研究機関において研究倫理教育に関するプログラムを予め修了していること、またはJSTが提供する教育プログラムを応募締切までに修了していること
大学院生が応募する場合、指導教員の了承を得た上で、本人と指導教員の署名入り確認書を提出する必要があります。
また、所属機関がJSTと委託研究契約を締結する必要もあるので、申請前に指導教員や先輩に確認してみると良いでしょう。
ACT-Xの申請スケジュールは?
2024年度の募集スケジュールは、以下の通りでした。
- 2024年3月:募集要項の公開
- 2024年4月上旬:募集開始
- 2024年5月28日:募集締め切り
- 2024年6~7月:書類選考
- 2024年7~8月:面接選考(オンライン)
- 2024年9月中旬:面接選考結果の通知
- 2024年9月下旬:選定課題の発表
- 2024年10月1日~:研究開始
申請年度によって違う場合もあるので、詳細は公式ページをご確認ください。
ACT-Xの採択率は?
ACT-Xの採択率に関する具体的な数値は公表されていませんが、「2024年度 戦略的創造研究推進事業(ACT-X)新規採択課題・総括総評」の情報から、ある程度の応募状況と採択数を推測してみましょう。
まず合計数を見ると、応募数629件に対して、採択数は103件なので、採択率は16.4%です。
そのうち、大学院生の採択数は25件でした。採択者における大学院生の割合は約24%となっています。
以下、研究領域ごとのデータを表形式でまとめました。
研究領域 | 応募数 | 採択数 | 採択率 | 大学院生の 採択数 |
---|---|---|---|---|
生命と情報 | 125件 | 19件 | 15.2% | 3名 |
AI共生社会を拓くサイバーインフラストラクチャ | 47件 | 11件 | 23.4% | 5名 |
次世代AIを築く数理・情報科学の革新 | 128件 | 30件 | 23.4% | 12名 |
トランススケールな理解で切り拓く革新的マテリアル | 138件 | 22件 | 15.9% | 3名 |
生命現象と機能性物質 | 191件 | 21件 | 11.0% | 2名 |
なお、ACT-Xは2019年に新設された比較的新しいプログラムということもあり、今後の採択率は研究領域や公募回によって大きく変動する可能性があります。
ACT-Xに採択された場合の研究費(給与)は?
ACT-Xでは、研究課題ごとに450万円~600万円程度の研究費が支給されます。
この研究費は、研究に必要な物品の購入や、研究補助員の雇用などに充当することができます。
ただし、ACT-Xは個人研究を支援するプログラムであり、採択者本人への給与は支給されません。
修士生、博士学生の場合は、RA経費が追加支援されることがありますが、これはあくまで研究を補助する学生への経費、つまり採択者が別の学生を雇用するための経費であり、採択者本人の給与ではありません。
なお、研究費の使い道については「【研究費の使い道】購入できるもの/できないもの…パソコン購入は?」という記事で詳しく解説しています。
学振とACT-Xの重複応募はできる?
日本学術振興会特別研究員(PD、DC)も、ACT-Xに応募できます。
DC(特別研究員-DC)の場合、給与を受け取りながらACT-Xの研究費を利用することができるかどうかは、大学(所属機関)の規定に依存します。
事前に確認し、必要であれば指導教員や研究支援担当者と相談しておくとよいでしょう。
【まとめ】ACT-Xは博士学生にもチャンスがある!
今回の記事では、ACT-X(アクトエックス)の概要や応募要件、採択後の支援、学振との重複について解説しました。
要点をまとめると、以下の通りです。
- ACT-Xは若手研究者が対象で、大学院生も応募可能
- 研究費として450万円~600万円が支給される
- 研究期間は最大2年6ヶ月
- 学振(特別研究員)との併用も可能
- 研究者ネットワークの構築や領域アドバイザーの指導を受けられる
ACT-Xは、博士学生が研究資金を獲得し、研究実績を作り、ネットワークを広げるための貴重な機会となり得ます!
もちろん競争率は高いですが、学振と比べると博士学生の挑戦者が少なく、狙い目かもしれません。情報収集をしながら、積極的に挑戦してみましょう。
最新情報はこちらにあるので、気になった方はチェックしてみてください。
コメント