研究費を獲得できた場合、どのような使い道があるのでしょうか?
- 研究費の使い道、ルールとは?
- 研究費で購入できるものとは?
- パソコンは購入できるのか?
このような情報を、記事にまとめました。
大前提ですが、研究費は「研究課題の遂行に直接必要な経費のみ」に使用することができ、それ以外はルール違反となります。
目的外使用が発覚すると研究費の返還を求められ、自己負担になる可能性もあるため、研究費の執行は慎重に行わなければなりません。
正しい使い方を知り、貴重な研究費を効果的に使えるようにしましょう。
※なお、科研費で購入できる物品・金額などのルールは、所属機関(大学)によって異なる場合がありますのでご注意ください。
研究の遂行に必要な経費とは?
研究者が日本学術振興会へ申請書を提出し、審査に通過してもらえる科研費ですが、「取扱要領」には、次のような記載があります。
(補助金の使用制限)
第 13 条 補助金の交付を受けた者は、補助金を補助事業に必要な経費にのみ使用しなければならない。
税金を原資にしているわけですから、研究に必要な経費のみに使うのは当然でしょう。
ここで注意すべきは、研究に「関連」している経費に使用することはできないという点。
「その経費を使わないと研究が進まない」という基準に照らして、目的外使用には気をつけましょう。
研究費の使い道とは?
研究費の使い道としては、以下のような費目が一般的です。
- 物品費(文献・資料・実験器具など)
- 出張における旅費
- 人件費、謝金
- その他(通信費・会議費など)
それぞれの使い方について、詳しく見ていきましょう。
物品費
研究費の使い道として、最もオーソドックスなのが物品費でしょう。
研究遂行に必要であれば、以下のようなモノを購入できます。
- 書籍、専門誌、雑誌
- 実験装置、試料、道具
- パソコン、タブレット
- ソフトウェア
金額が大きくなる場合には、複数業者からの見積もり(相見積もり・アイミツと呼ばれます)が必要になったり、検収担当職員が機器を確認したり、様々なルールを守る必要があります。
金額が10万円を超えると消耗品扱いではなくなり、資産登録が必要となるケースもあるため、所属機関の経理ルールを確認しておきましょう。
※研究費でパソコンを購入する際のルールは?
物品費の中でも汎用性の高い「パソコンやタブレット端末」は購入できるのでしょうか?
結論としては、研究遂行に必要であれば、パソコン・タブレット端末も購入可能です。
物品等については、科研費の補助事業専用とすることは必ずしも求めていません。科研費の補助事業の遂行に支障がなければ、研究機関外の研究者を含め科研費以外の研究のために使用しても差し支えありません。
(科研費FAQ 令和4年8月版より引用)
ただし、「換金性の高い物品」とみなされますので、使用目的の記載・口頭での説明・現物確認などが必要となる場合があります。
出張旅費
研究費の主要な使い道の2つ目として、出張旅費が挙げられます。
- 学会への参加
- 各種調査、資料収集(フィールドワーク)
- 研究の打ち合わせ
- 研究の成果発表
上記のような、研究遂行に必要となる交通費、宿泊費などは、研究費から支出できます。
ちなみに、業務上やむを得ない事情でキャンセル料が発生したときは支出できますが、自己都合でのキャンセル料は研究費で払うことはできません。
人件費・謝金
研究費は、人件費・謝金としての活用も可能です。
- 資料整理
- 実験補助
- 翻訳、校正、校閲
- アンケート協力
- 研究協力者
近年では、クラウドソーシングサービスの活用も容易になっています。
英語論文の校正や、プログラミングなどの領域では、優秀なフリーランスに安価でアウトソーシングできることもあります。
なお、研究代表者(PI)においては、研究以外の業務(講義などの教育活動や、付随する事務など)の代行経費を支出できる「バイアウト制度」も利用できるようになりました。
バイアウト制度については「バイアウト制度で研究時間を確保する?科研費等をバイアウト経費に使える」の記事で詳しく解説しております。
その他費用
その他、研究費の使い道としては、以下のような項目が挙げられます。
- 印刷費、複写費
- 通信費(切手、ハガキ、電話)
- 会議費(会場借料、食事費用など)
- 学会年会費
- レンタル費用(PC、自動車、実験器具など)
上記のような、研究において直接必要な費用は、研究費から支出できます。
研究費が使えない経費とは?
ここまでは研究費の使い道について解説してきましたが、一方で「研究費が使えない経費」もあります。
- 建物等の施設に関する経費
- 事故、災害の処理のための経費
- 研究代表者や研究分担者の人件費
- 学会等のアルコールを含むレセプション費用
- 手土産代
- 携帯電話通話料
これらの項目は、研究において使用した金額であっても、使えません。
研究グループを組織して研究費を申請した場合、研究代表者自身やグループ内の研究分担者に対しては、人件費として支出できません。
自分で判断できない場合は、必ず研究費の取扱窓口に相談するようにしましょう。
研究費を合算して使用することも可能
研究費の使い方として、合算使用という方法もあります。単独の科研費では購入できない高性能機器を、他の資金と合算して購入できる制度です。
「科研費同士の合算使用」「運営費交付金や、使途を制限されない競争的資金との合算使用」が可能。
高価でグレードの高い実験機器を導入できれば、より成果を求めやすくなることでしょう。過去には、マルチ分光測色計や原子間力顕微鏡などの導入実績があります。(文部科学省:共用設備購入の具体的な例)
ただし、合算使用をする場合は、事務担当に事前に問い合わせ、細かなルールの見落としが無いように注意しましょう。
【まとめ】研究費の正しい使い方を知り、有効活用しましょう
今回の記事では、研究費の使い方と、基本的なルールについて解説しました。
要点をまとめると、以下の通り。
- 研究遂行に直接必要な経費のみが支出可能
- 関連費用の計上は不可
- 使い道は大きく分けて4つ(物品費、旅費、人件費、その他)
- パソコンも、ルールを守れば購入できる
- 手土産など購入できないものもある
申請に苦労し、ようやく採択された貴重な研究費です。
会計検査や内部監査などで目的外使用を疑われないためにも、正しい使い方と注意点を理解しておきましょう。
文科省・厚労省の定めるルールと、大学内でのルールとで異なっているケースもあります。少しでも不明点があれば、事前に事務担当に相談するのが良いでしょう。
研究費ってどこから出ているかという疑問については、「【大学院】研究費はどこから?申請先と仕組み」の記事をご覧ください。本記事が、研究費の使い方の参考になっていれば幸いです。
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