【博士課程の収入源】お金がなくて貧乏ってホント?給料もらえる制度も

お金

日本の博士課程は海外と異なり、給料をもらえません。

むしろ授業料の支払いが必要で、お金に困る博士学生も少なくないのが現実…。

  • 博士課程ではお金がなくて貧乏な生活をしてる人が多い?
  • 博士課程における収入源は?
  • 給料のようにお金を貰える制度も増えている?

このような内容を、記事にまとめました。

結論として、博士学生の収入源は①学振、②奨学金、③TA/RAなどの学内雇用、④有給インターンなどの学外雇用、⑤単純なアルバイトなど、多くの選択肢があります。

また、現在は国や大学が独自に博士学生の金銭的課題をフォローする制度も充実しています!

本記事では、博士学生は本当に貧乏でお金がないのか…その実態と、収入源についてのヒントを解説していきます。

博士課程での経済的不安を解消し、研究に集中できるよう、ぜひ参考にしてみてください!

博士課程ではお金がなくて貧乏ってホント…?

博士課程において、金銭的なストレスを抱えている博士学生は少なくありません。

内閣府が令和2年に発行した『研究力強化・若手研究者支援総合パッケージ』によると、博士学生のうち約半数しか、給付型の奨学金を受給していないようです。

また、文部科学省による『学生に対する経済的支援の全体像(博士課程 )』によると、経済支援を受けている博士学生のうち約90%は、「受給額が生活費相当額以下」で、授業料が賄えるかどうか…という水準にとどまっています。

さらに別の角度から見てみると、博士課程を中途退学する人のうち金銭問題が理由になっている割合は5.42%で、そもそも博士課程に進学しなかった理由として「金銭的な不安」を挙げている人も多いです。

つまり、「博士学生はお金がなくて貧乏…」というイメージは、実態としても少なからず存在していました。

しかし、博士課程で収入を得る方法は多岐にわたり、様々な支援制度も整備されつつあり、近年は経済的不安を持たずに研究活動に集中している学生も多くなっています

以下、具体的なヒントを見ていきましょう。

博士課程の収入源5つ【メリットとデメリット】

博士課程の主な収入源として、以下5つがあげられます。

  • 学振
  • 奨学金
  • TA/RAなどの学内雇用
  • 有給インターンなどの学外雇用
  • 単純なアルバイト

それぞれの内容と、メリット・デメリットを解説します。

①日本学術振興会の特別研究員(学振)

一つ目の大きな収入源として、日本学術振興会の特別研究員(以下、学振)があげられるでしょう。

博士課程の学生を対象としたDC1/DC2に採択されると、研究費とは別に年間240万円の研究奨励金が支給され、学費や生活費を賄うことができます。また、学振は研究者としての業績として有利に評価されるのもメリットです。

ただし、学振の申請には厳しい審査があります。採択率は5人に1人程度と、狭き門です。

ちなみに、以前は学振では副業が禁止されていましたが、現在は「常勤ではなく、研究活動に支障がないことを受入研究者に報告し、それが認められた副業」に限り、認められています。(参考:日本学術振興会特別研究員 遵守事項および諸手続の手引

もちろん、学振を受けながら有給のインターンシップに参加することもできます。

②奨学金で学費と生活費を賄う

博士学生の収入源として、奨学金も一般的です。

奨学金には、日本学生支援機構(JASSO)や、各大学の奨学金など多くの種類がありますが、返済が必要なもの(貸与型)と、返済が不要なもの(給付型)があるので確認してみましょう。

最も利用者が多い日本学生支援機構の奨学金には、利子負担がない第一種と、利子負担がある第二種があります。

修了後に返済負担が大きくならないよう、金額や利子に気を付けましょう。また、奨学金の申請には、学業成績や家庭の経済状況などの審査があります。

その他、民間奨学金や、学内奨学金もあるので積極的に情報をとりにいき、できれば給付型の奨学金を受給したいところです!

以下の記事でも詳しく解説しているのでご覧ください。

博士課程の奨学金っていくら? 給付型や返還免除を含めて解説

③TA/RAなどの学内雇用は博士学生ならでは

ティーチングアシスタント(TA)、リサーチアシスタント(RA)いった学内雇用は、博士学生ならではの収入源です!

アルバイトのように賃金をもらいながらも、研究補助や後輩指導などのアカデミアに関連した実績や経験を積むことができます。

また、場合によっては非常勤講師という選択肢もあります。この場合は金銭的メリットよりも、自分の実績としてのメリットに重きを置いてる人が多いでしょう。

ただし、これらの収入は学費や生活費を賄うのに必要十分とはいえないのがデメリットと言えます。

④有給インターンシップなどの学外雇用

博士学生が有給のインターンシップに参加することで、企業から給料をもらう制度も増えています。

特に2021年度からスタートしているジョブ型研究インターンシップ」は文部科学省と経団連が推進する制度で、博士人材の新たなキャリアパスに貢献しています。

企業の「長期かつ有給のインターンシップ」に参加することが、大学院の「単位科目」として位置づけられるという画期的な取り組みで、2022年度は企業側から64件の募集がありました。(参考:ジョブ型研究インターンシップ推進協議会

ちなみに、ジョブ型研究インターンシップでの成果は、企業側が採用選考活動に反映することが可能となっています。インターン終了後、そのまま内定→修了後に就職という道があります。

また、一部の企業では博士学生向けの有給インターンシップを個別に開催しています。例えばサイバーエージェントの「リサーチインターンシップ」では、月額50万円もの高額報酬を貰いながら、2か月間、実際の業務に携わることができます

最後に、理化学研究所が博士学生を非常勤として採用する「大学院生リサーチ・アソシエイト(JRA)制度」も紹介しておきます。

数理科学・物理学・化学・工学・生物学または医科学の科学技術分野に限られますが、月額20万円の給与をもらいながら日本最高峰の研究所で経験を積めるのは大きなメリットです。(参考:大学院生リサーチ・アソシエイト

ただし、学外活動が増えると、長期に渡って自分の研究室を空けることにもなります。指導教員とスケジュール調整・相談をしておくことが大事です。

⑤単純なアルバイト

博士学生の中には、色々な事情があり、一般的なアルバイトをする人もいます。

生活のために今すぐお金が必要という場合、即日で現金支給される単発アルバイトなども手段のひとつです。

ただし、当然ながら研究とは関係ないことに時間と体力を使ってしまうので、博士課程全体のプランニングを崩さないように気をつけましょう。

博士学生がお金を貰える!代表的な国の制度2つ

ここまで紹介した収入源だけでは、博士課程の授業料や生活費が十分に確保できない場合もあります。

そこで、以下に紹介する博士学生が給料のようにお金をもらえる国の制度」を活用するのもいいでしょう。

以下、学振以外の2つの制度について解説します。

①次世代研究者挑戦的研究プログラム(SPRING)

次世代研究者挑戦的研究プログラムは、科学技術振興機構(JST)が実施する、博士後期課程学生の挑戦的・融合的な研究を支援するプログラムです。

次世代研究者挑戦的研究プログラム 令和6年度公募要領」によると、支援額は年180万円~240万円となっています。

学振と同等の支援金をもらえるにも関わらず、令和4年度の支援数は約6,000人で、倍率は比較的低いと言えそうです。

(※前述の通り、学振の採択率は16~17%ほどの狭き門です。)

②大学フェローシップ創設事業

大学フェローシップ創設事業とは、文部科学省と各大学が連携して博士課程学生の待遇向上とキャリアパスの確保を目指して2021年に作られた制度です。

支援規模は一年に1000人で、生活費相当額の年180万円が支給されます。

各大学の強みを活かせる分野と、人材ニーズの高まる分野(情報・AI・量子・マテリアル等)に限定されるものの、その分だけ自分の研究テーマと一致していれば採用率は上がることでしょう。

文科省は博士人材の処遇改善をさらに強く進めようとしている

国としても、博士人材の経済不安、キャリアパスの不透明さの改善には強い問題意識を持っています。

令和6年度の『科学技術関係概算要求』を見ると、前述の「次世代研究者挑戦的研究プログラム」と「大学フェローシップ創設事業」を一体化させ、博士後期課程学生が研究に専念できる経済的支援を行うことを目指しています。

支援人数は年間10,800人を目指しており、大学によるキャリアパス整備費を含め博士学生1人当たり最大で年290万円の支給を検討。

さらに、生成AIの活用など国家戦略分野における博士学生支援として支援単価年6百万円の「次世代AI人材育成プログラム」が新たに実施されることになっています。(参考:科学技術関係概算要求・3ページ

さらに、この概算要求の資料の中には学振DCの支給額引き上げについても記載があります。(年額240万円から、312万円への増額)

以上のように、国を挙げて次々と博士学生への支援策を打ち出しています。

すべての博士学生が経済不安を抱えることなく、自分の研究活動に打ち込めるような環境が実現する日も遠くないかもしれません!

授業料免除の申請も活用しよう

ここまでは博士学生の収入面について見てきましたが、支出削減という点で「授業料免除申請」も有効です。

ほとんどの大学で授業料の免除制度があり、審査によって全額もしくは半額が免除される場合があります

金額的に大きなメリットがあるので、大学ホームページなどで申請方法を確認してみましょう。

まとめ

今回の記事では、博士課程の収入源について解説してきました。

博士学生は、研究者としてスキルアップを目指す立場であるだけでなく、日本の研究開発やイノベーションの原動力でもあります。(※日本の学術論文のうち25%は大学院生が筆頭著者。)

そんな博士学生が経済的不安を抱えながら研究に取り組むのは、決して良い状況ではありません。

今までは学振に採択されるかどうかが最大のポイントでしたが、ここ数年で博士学生支援の動きは拡大傾向にあります!

そして、今後はさらに支援人数や金額の増加が予定されています。

各種制度にアクセスすることや、研究予算を獲得することも、研究者が身に着けるべきトランスファラブルスキルのひとつと言えます。

本記事で紹介した情報を参考に、積極的にチャレンジしてみましょう。

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