【論文】著者の順番…正しい書き方とは?筆頭著者と責任著者の評価が高い

研究

学術論文において、著者の順番は重要です。

しかし、その書き方は、明確なひとつのルールがなく、トラブルになることもあります。

  • 論文における著者の順番とは?
  • 著者順の書き方、ルールは?
  • 博士論文においては筆頭著者が学生、責任著者が担当教授?
  • ギフトオーサー、ゲストオーサーシップとは?

このような情報を、記事にまとめました。

結論としては、論文執筆において一定レベル以上の貢献をした人物だけが著者として認められ、多くの場合、「相対的貢献度」が大きい順番で記載するのが慣例となっています。

ただし、専攻分野によって慣例が違いますし、著者数が5000名を超える論文もあるので、ルールもまちまちです。

そんな中、「不適切なオーサーシップ」の問題もあり、著者順の取り扱いには注意が必要です。

今回の記事では、論文の著者順に関して、基本的な考え方と正しい書き方、注意点などを紹介していきます。

論文著者の資格条件

そもそも、論文の著者として名を連ねるためには、どのような条件が必要でしょうか?

基本的認識としては、論文内容に対して重要な貢献をしており、研究全体に対して責任を引き受ける意思がある人が、著者と言えるでしょう。

例えば、科学分野で主に参考にされている「医学雑誌編集者国際委員会(ICMJE)のガイドライン」では、著者の条件を以下のように定めています。

  1. 研究のコンセプト・デザイン、データ収集・解析・解釈への貢献
  2. 著作物の原案作成または、重要な知的内容についての改訂
  3. 出版される論文原稿を最終的に承認した
  4. 研究に対するあらゆる面に責任を負うことに同意

ICMJEのガイドラインでは、4つの条件を「すべて満たす者」が、著者として認められるとしています。

研究費の獲得、研究環境の提供者、事務的支援、実験に関与したが論文内で使用されなかった場合などは、「著者」ではなく「謝辞」に名前を記載するように示されています。

また、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)では、オーサーシップについて以下のように記載しています。

①研究の企画・構想、若しくは調査・実験の遂行に本質的な貢献、又は実験・観測データの取得や解析、又は理論的解釈やモデル構築など、当該研究に対する実質的な寄与をなしていること

②論文の草稿を執筆したり、論文の重要な箇所に関する意見を表明して論文の完成に寄与していること

③論文の最終版を承認し、論文の内容について説明できること

の、全ての要件を満たす者について著者としてのオーサーシップを付与することが考えられる 。ただし、これらの要件については研究分野によって解釈に幅があることから、各研究分野
の研究者コミュニティの合意に基づいて判断されるべきものである。

(参考:研究活動の不正行為及び研究費の不正な使用について

不適切なオーサーシップとは?

上記の通り、著者権利を有するためには論文への貢献度や責任が必要です。

しかし、現場においては、ガイドラインを守らない「不適切なオーサーシップ」という問題も少なくないようです。

ギフトオーサーシップ(gift authorship) / ゲストオーサーシップ(guest authorship)

研究に対して重要な貢献をしていない(もしくは全くしていない)にも関わらず、組織における地位や関係性によって、共著者として名前を入れること。

ファージドオーサーシップ(forged authorship)

研究には直接的にかかわっていないが、出版(アクセプト)の可能性を高めるために、有名で実績のある研究者を著者リストに加えること。

ゴーストオーサーシップ(ghost authorship)

研究成果に貢献したが、著者リストに加えられないこと。

研究者間での対立、または編集者、査読者、読者へ利益相反を隠すために行われることがあります。

以上のような「非倫理的行為」を行うと、その研究の価値は一気に低下します。

研究者としての信頼を下げる行為にもなりますので、不適切なオーサーシップには注意しましょう

著者順は「貢献度が高い順」に書くのが一般的

著者リストのどの順番に名前が掲載されるかは、研究者にとっては重要な問題です。

第一著者の論文が研究実績として重要なのは当然ですが、「第二著者なのか、第三著者なのか」というのも、研究業績として意味を持ってきます。

しかしながら、先ほどのICMJE、及びJSTのガイドラインでは、「著者順」については指定していませんし、各分野の慣例に任せている側面もあります。明確なルールがないため、研究者同士で争いの元になるケースもあるほどです…。

ただ、一般的には「論文への相対的貢献度が高い順番」で著者名を書いていきますので、以下、補足していきます。

第一著者(筆頭著者) first author

第一著者は、論文完成に最も中心的な役割を果たした著者です。

筆頭著者、ファーストオーサーとも呼ばれます。

博士号取得のためにもファーストオーサーの論文は必要不可欠であり、若手研究者としては「筆頭著者の論文をどれだけ書いたか」が大きな評価ポイントになります。

また、他の研究で論文が引用される際、ファーストオーサーだけは必ず名前が表記されるため、第二著者以降とは「一線を画す価値がある」と言えるかもしれません。

第二著者(second author)

セカンドオーサーは、筆頭著者の次に貢献度の高かった著者です。

研究計画を一緒に立てたり、実験やデータ分析を共同で行ったりした人を記載します。

修士学生、博士学生の論文においては、指導してくれた助教や先輩などの名前を記載するケースも見られます。

第一著者ほどではありませんが、第二著者も当然ながら「研究実績」として評価されます。ただし、論文引用時には名前は書かれないことも多いです。

最終著者(last author)

その後、著者数が多い論文であれば「第三著者」「第四著者」と貢献度順に続いていきますが、「最終著者」だけは取り扱いが別です。

ラストオーサーには、研究室のリーダーや管理者の名前を記載します。

修士学生、博士学生の場合は、指導教員をラストオーサーにすることが多いでしょう。

ただし、論文に実質的に関与していないにも関わらず、指導教員をラストオーサーにするのは「不適切なオーサーシップ」となります。

責任著者(corresponding author)

コレスポンディングオーサーとは、論文に関する最終的な責任を持ち、中長期的に問い合わせに応じられる人がなります。責任著者名の上にはアスタリスクマーク(*)が付きます。

第一著者が責任著者になるケースもありますが、学生やポスドクは連絡先が変更になる可能性も高く、基本的には教授など研究室主宰者(PI: Principal Investigator)が責任著者となることが多いです。

なお、アカデミアにおいては第一著者か責任著者の評価が高い傾向にあるようです。

分野によって著者順の慣例に差がある

著者の順番の書き方は、研究領域等によって大きな違いがあります。

例えば、素粒子物理学・政治学などでは、「アルファベット順」に著者名を記載する方法がとられることもあるようです。

ちなみに、研究によっては著者数がなんと1000名を超える場合もあります。物理学では5154名の著者が名を連ねる論文も出ています。

そうなると、中間に記載される著者にとっては、何番目でも関係なくなってくるでしょうね…。

(参考)世界最多、科学者5000人が関わった論文公開

「CRediTシステム」で論文貢献度を明確にする動きも

また、シドニー大学のアレックス教授は「CRediTシステム」を提唱し、賛同する機関も増えています。

研究論文における役割を14種類に分類し、著者の貢献度を確認するシステムで、研究者がどの程度論文に貢献したのかを数値化する試みです。

20を超えるジャーナル出版社が「CRediTシステム」を導入しており、近年は論文投稿手続きの際に「この著者はどのような貢献をしたか」を記入することも増えています。

(参考:Editorial Managerで著者の貢献度を把握するための「CRediT」活用法

著者順による印象

先ほども触れましたが、アカデミアにおいては「責任著者」の評価が高い傾向にあります。

第一著者が責任著者を務める場合には、間違いなくその人の貢献度が一番高いでしょう。

しかし、最終著者が責任著者を務める場合には、「最終著者の指導の下で第一著者が研究を主導した」というような構図が読み取れる場合もあるようです。

【まとめ】論文の著者順は事前に合意を取り、適切に書くのが重要

今回の記事では、論文における著者の順番について解説してきました。

要点をまとめると、以下の通り。

  • 貢献していることと、研究内容への責任が著者の要件
  • 不適切なオーサーシップは研究倫理に反するので注意
  • 著者の順番は明確なひとつのルールがない
  • 相対的貢献度の高い順に記載するのが一般的
  • 最終著者、責任著者は研究リーダーが名を連ねるケースが多い

誰を著者として記載するか、そしてその順番をどうするか…研究者同士で意見が分かれるケースも少なくありません。

論文を書き始める前に、あらかじめ相談しておくのがベストでしょう。

もちろん、途中で研究へのかかわり方が変化したり、メンバーが増減したりすることもあります。その都度、なるべく早いうちに著者順については関係者の同意を得ておくようにしましょう。

論文は、研究者の実績となるだけでなく、科学的・社会的責任を負うことにもなります。

各研究者の貢献度が適切に反映された著者順になるよう調整するのもプロジェクトのひとつと考え、適切に取り扱いましょう。

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