博士学生は、就職活動の時期でも研究で多忙を極めます。そのような博士学生の就職活動でも、最初に評価を受けるのはエントリーシートであることが殆どです。如何にエントリーシートを魅力的に作り込むかが、応募プロセスの第一歩となります。
- 博士採用のエントリーシートって何を書くべき?
- 博士学生のESが通らない理由とは?
- 面接に繋げるエントリーシートの効果的な書き方とは?
今回の記事では、上記のような疑問を解決します。
博士学生も学生ではありますが、学部生や修士生と比べると一人前の研究者、あるいは社会人に近い視点で見られます。学部生や修士生と同じような感覚でESを作成していると、思わぬ低評価を受けてしまう可能性があるので注意しましょう。
今回の記事では、博士学生のエントリーシートが書類選考を通過しない原因4つと、効果的なエントリーシートの書き方を具体的に解説します。ぜひ最後までご覧ください!
博士の就活でもエントリーシートは重要
学部生や修士生とは異なり、博士の就活には早期選考や特別選考ルートがあります。
そうした選考でも、多くの場合でエントリーシートの提出が求められます。
エントリーシートでの設問は、大きく分けて「研究紹介」「志望動機」「能力・経験」の3つです。
より具体的には、以下のような内容が求められます。
- 現在の研究テーマを選んだ理由は?
- 研究で何を実現しようとし、何を学び、それをどのように活かすか?
- 入社後にチャレンジしたい仕事や実現したい夢は?
- 当社を志望する理由は?
- ご自身の強みとそれを表すエピソードは?
- 博士課程での経験の中で、当社で活かせることは?
- これまでで乗り越えた困難や、創意工夫した点は?
一見すると学部・修士生の就活においても「ありがちな設問」ですが、学部生、修士生と同じような書き方をしてしまうとなかなか通過しません。なぜでしょうか?
【博士課程】エントリーシートが通らない理由4つ
博士課程の学生のESが通らない理由は人によって様々ですが、ここでは特に重要な4つの理由を紹介します。
理由1:求める人材像とのミスマッチ
そもそも、企業が求める人材像を正しく理解できていないと自己PRも上滑りしてしまいます。
多くの企業は博士人材に対して「新しい何かを生み出す人材」「組織の中核的人材」として活躍することを期待しています。そのため企業は、ESや面接などからあなたがそのような人物になりそうかを判断しています。
需要と供給のピースを合わせるイメージを持たないと、魅力的なESにはなりません。
エントリーシートの各設問への回答を通して、入社後に活躍できることをイメージしてもらえるよう、戦略的に記載することが重要です。
理由2:研究実績ばかりで人材としてのスキルや魅力がアピールできていない
研究概要を記載する際に、専門的な内容や研究結果ばかりをアピールしてしまう博士は少なくありません。
もちろん、博士人材として専門性の深さは大きな武器ですが、企業が知りたいのは専門性を追求してきた過程であり、あなたが「自社の社員として、将来にわたって活躍できそうかどうか」なのです。
今、取り組んでいる研究は今の研究室の研究なので、入社後は他のテーマに取り組むことになります。つまり、入社後も研究者として成果を出し続けられることを伝えるための素材として、現在の研究を紹介しているという視点を忘れないようにしましょう。
研究活動を通して人間的に成長した点や活躍した点、そして企業においてもそのトランスファラブルなスキルを発揮できることを示唆するようなエピソードを書かなくてはなりません。
もちろん、研究活動以外のエピソードも歓迎されますが、博士人材ならではの、突出した自己PRをしたいところです。
理由3:志望動機が抽象的で弱い
ほとんど全てのエントリーシートおよび面接で「志望動機」は重要な設問です。ここが弱くて浅いと、なかなか書類審査に通過しません。
例えば、以下の回答をご覧ください。
貴社の掲げるビジョンに強く共感し、その実現に向けて研究開発を重視している点に大きな魅力を感じています。これまで培ってきた基礎科学の知見を活かして、貢献していきたいと考えています。また、貴社の蓄積された知識や技術を学びながら、将来的には国際的に活躍したいです。
一見すると企業と自分をマッチングさせているような文章ですが、すべての言葉が抽象的です。
自己分析と企業分析の両方が浅いと感じられてしまい、魅力的なESになっていません。
理由4:”読んでもらうES”になっていない
初歩的ではありますが、そもそも設問に答えていないエントリーシートも散見されます。まずは聞かれたことに回答し、分かりやすい文章を書きましょう。その中で、自身のアピールを散りばめていきます。
また、研究内容についてはどこまで専門的な内容まで踏み込むか、そのバランス感覚も重要です。
最初にESを読むのは人事担当者であることもあるため、まずは該当分野の知識が少ない人にも伝わるように意識して書くのが好ましいでしょう。ただし、制限文字数に余裕があれば、具体的かつ専門的な内容に踏み込んで書かないと、浅く捉えられてしまいます。
当然ながら、誤字脱字や冗長な文章も印象は悪くなります。
【博士向け】魅力的なエントリーシートの書き方
前述の通り、エントリーシートの設問は、大きく分けて3つにカテゴライズできます。
- 研究紹介
- 志望動機
- 能力・経験
以下、それぞれについて魅力的なESの書き方をご紹介します。
①研究紹介
エントリーシートの研究紹介部分では、専門的な知識や、最新の研究結果を知りたいわけではありません。
採用側は、研究に対する向き合い方や目的意識の持ち方を通して、あなたが将来にわたって活躍できそうかどうかを見ているのです。研究実績は、あくまでも「その確からしさ」を補完する情報に過ぎません。
- 何のための研究か(目的≒社会との繋がり)
- そのために何をしようとしているのか(研究の目標)
- どのように研究を進めたのか(プロセス、創意工夫)
- その結果、なにができたのか(結果)
- 今後の展望(計画)
研究紹介部分は、上記のような構成で書くのがおすすめです。
現在取り組んでいる研究を言語化し、それが最終的にどのような価値を持つのかを、論理の飛躍がないように展開していきましょう。
自分の研究に対して、「それはつまり、何のためになる?」と何度も問いかけ、俯瞰して言語化することで、最終的にはあなたの研究活動は「世のため、人のため」に繋がるはずです。
企業がやりたいことも、最終的には「世のため、人のため」なので、あなたの研究活動と企業活動がオーバーラップしてきます。
このように自身の研究を企業活動と結び付けながらエントリーシートに落とし込むことで、採用担当者にとって魅力的な研究紹介になるでしょう。
②志望動機
エントリーシートの志望動機パートでは、自己分析と企業分析を、上手にマッチングさせることが大事です。
前述のように自身の研究を俯瞰して言語化することで、自分のやりたいことと企業のやりたいことがどのようにオーバーラップしているかが見えてくるはずです。
- 入社後にどんなチャレンジをしたいのか
- 将来的に何を成し遂げたいのか
- そのために自分が経験、獲得してきたものがどう活かせるか
上記のような内容とともに、「あなたはなぜその分野、その研究に対して強い興味関心を持っているのか」という原体験を思い出すことで、本質的な、深い志望動機が書けるようになります。
③能力・経験
博士人材がESに自己PRを記載するときは、自分が新しい何かを生み出す人材であること、組織の中核を担う代替困難な人材になれることを、採用側に期待させるようなエピソードを示すのが大事です。
「何ができたら研究開発力が高いと言えるのか?」「優れた研究者は何ができるのか?」「どんな人材が組織の中核になり得るか?」を改めて言語化し、それに照らして自己分析・自己評価をしましょう。(※考えるだけでなく、実際に文字にすると良いです。)
なお、高校および学部修士にて表彰されることがあったとしても、やはり博士課程こそが一人前の自立した研究者として活動している期間であるはずです。具体的なエピソードは、できる限り博士進学以降の出来事が望ましいでしょう。
研究活動を中心に据えながら、あなたのトランスファラブルスキルを伝えることを意識しましょう。
博士学生がエントリーシートを書く前に
エントリーシートを書く前に、自分自身について、そして自分の研究について、棚卸しをする必要があります。
そもそも、研究活動は進んでいるのか?学位取得できるか?自分の強みは?トランスファラブルスキルのうちのどれを強くアピールできるか?…これらを意識し、言語化するためには、博士としての活動が順調に進んでいる必要があります。
魅力的なエントリーシートを書くためにも、まずは研究活動に集中し、また、研究外の活動にも積極的にチャレンジしましょう。本質的には、それが「魅力的なESを書くための近道」なのかもしれません!
実際、どのようにESに落とし込めばいいのか…?
ここまで、博士のESが通らない原因と、その対策についてまとめてきました。
しかし、実際に自分がESを書くときには、どのエピソードが適切なのか、それをどのように言語化すればいいのか、細かな点も含めて迷うことがあるでしょう。
「博士情報エンジンwakate」では、就活に関する各種セミナーを行っています。
また、キャリアアドバイザーとの面談の中で、エントリーシートの書き方について個別に相談することも可能です。
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まとめ
今回の記事では、博士学生のエントリーシートについて、よくある課題と解決策を解説してきました。
魅力の足りないESになってしまう理由は「求める人材像とのミスマッチ」「人材としてのアピール不足」「志望動機が薄い」「設問に正確に答えられていない」という4つでした。
そして、本記事では伝わりやすくて魅力的なエントリーシートの書き方も紹介してきましたが、実は、博士としての日々の活動が充実していれば、それを素直に言語化するだけで魅力的なエントリーシートになります!
自信を持って自分をPRできるよう、博士生活を充実させ、多様な経験をしていきましょう!
あなたの魅力が正しく伝わるES作りの参考にしてみてください。
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