【論文】アブストラクトの書き方は?具体例&テンプレートを紹介!

キャリア

研究論文を執筆する上で、アブストラクト(要旨)は非常に重要です。

多くの場合、読者がタイトルの次に目を通すのがアブストラクトで、論文全体を読むかどうかを決める判断材料となります。

極端なことを言えば、研究内容がどれだけ優れていても、アブストラクトがきちんと書けていないと、本文まで読んでもらえなかったり、結果に対して意図しない捉え方をされてしまう可能性があります…。

今回の記事では、効果的なアブストラクトの書き方について、具体例を交えながら詳しく解説していきます!

アブストラクトとは?その役割

アブストラクトとは、論文のエッセンスを凝縮した概要文です。研究の目的、方法、結果、結論を簡潔にまとめ、論文の冒頭に入れるのが通例となっています。

多くの読者は、アブストラクトを読むことで、論文全体を読むかどうかを判断します。よって、アブストラクトは「論文の顔」とも言える重要な役割を果たしているのです。

また、学術データベースや検索エンジンを通じて論文検索される際、最も目に触れやすいのがアブストラクトです。適切なキーワードを含ませ、研究内容を的確に表現することで、論文へのアクセスを増やすことができ、内容が良ければ引用される可能性が高まることにも繋がります。

アブストラクトの基本テンプレート

効果的なアブストラクトは、以下の4つの要素から構成されるのが一般的です。

これらの要素を適切につなぎ合わせることで、研究の全体像を簡潔かつ明確に伝えることができるでしょう。

①目的・背景

研究の背景や動機、解決したい課題を示します。なぜこの研究を行ったのか、どのような問題に取り組んでいるのかを明確にし、読者に研究の重要性を理解させる部分です。目的は通常、最初の数行で述べられ、読者に研究の意図を把握してもらいます。

②方法

研究で使用した手法やアプローチを説明します。実験や調査、データの収集方法など、具体的な手段を簡潔に述べます。読者は、この部分で研究がどのように実施されたのかを確認し、信頼性や再現性を判断します。方法はシンプルかつ明瞭に述べ、技術的な詳細にまでは立ち入る必要はありません。

③結果

研究の主要な成果や発見を示します。研究で得られたデータや結論を述べ、読者に研究の価値や新規性を理解させます。数値データや統計的有意性を含めると、より具体的で説得力のある記述になります。この部分が不明瞭だと、読者は論文全体の価値を理解しにくくなります。

④結論

研究の意義や今後の展望をまとめます。結論は、結果に基づいた解釈や提案を短く述べ、研究の意義や社会的影響を強調する部分です。また、今後のさらなる研究の方向性を示すことで、読者に強い印象を残します。

アブストラクトの書き方:4つのステップ

アブストラクトの書き方として、以下4つのステップで進めていくのがおすすめです。

ステップ1:論文の主要部分を抽出する

まず、論文の主要な要素(目的、方法、結果、結論)を抽出します。各セクションの要点を洗い出し、アブストラクトに含めるべき重要な情報を整理します。この段階では、文字数を気にしたり、文章化したりする必要はなく、ポイントを箇条書きにするだけで十分でしょう。

ステップ2:各要素を簡潔に記述する

抽出した情報を基に、前述の4つの基本構成要素(目的、方法、結果、結論)に沿って簡潔な文章を作成します。この段階で、各セクションに1~2文ずつ書きますが、技術的な詳細や複雑な表現は避けた方が良いでしょう。

ステップ3:文章を繋げて一つの読みやすい文章にする

各要素の文章を滑らかにつなぎ、一つのまとまりのある文章に仕上げます。適切な接続詞を使用し、文と文の間の論理的な流れを確保します。論理的な流れと一貫性を保ちつつ、読者が容易に理解できるように工夫しましょう。

ステップ4:推敲と最終チェック

完成したアブストラクトを何度も読み返し、不要な情報や冗長な表現を削除します。同時に、重要なキーワードが含まれているか、文字数制限を守っているか、文法的な誤りがないかをチェックします。必要に応じて、文字数の調整やキーワードの挿入も行い、完成度を高めましょう。なお、完成したアブストラクトを推敲する際は、数日置いてから、改めて新鮮な目線で見直すのが効果的です。

アブストラクトの文字数は?具体例も紹介

アブストラクトの適切な文字数は、投稿先のジャーナル・学会・大学によって異なりますが、一般的な目安は以下の通りです。

  • 日本語の場合:200〜400字程度
  • 英語の場合:200〜300語程度

朝日新聞デジタルがアブストラクトの具体例を4つ掲載していますが、そのうち一つを例示します。

東日本大震災から2年が経過した現在、環境に負荷をかけない、自然エネルギーを生み出すことは被災地の希望でもある。津波被災地では塩害に悩まされ、体制がある植物は限られている。アジサイは塩害に強く土壌の浄化作用も持つ。このアジサイを用いた色素増感太陽電池を開発し、実用化することは復興の一助となると考えた。

アジサイの赤、青、紫いろの花弁、葉から色素を抽出し、色素増感太陽電池を作製した。このセルを用い、起電力を得るための優れた条件を研究した。更に電池としての実用化を目指す第一歩として、太陽電池の性能の指標となる曲線因子を求め、電池としての特性を検証した。

本研究で得た最適条件は①アジサイの青色の花弁を用いる②式粗抽出の際に葉、花弁を60℃で乾燥させたものを用いる③色素に超音波を当てて用いる、の3点であることを発見した。また曲線因子が約0.6であり、電池として十分に優れており、実用化の可能性があることを示せた。

アジサイの色素増感太陽電池は、被災地における新たな産業的活動の柱になる可能性を秘めている。更に、アジサイの栽培を通じて、土壌の再生を可能にするだけでなく、復興に向けた産業の誘致や雇用の創設、そして景観づくりに役立て観光客を呼び込み、豊かな街にしていくためのシンボルの一つとすべく、今後も研究を発展させていきたいと思う。

上記のように、背景→方法→結果→結論という形式にすると、簡潔で理解しやすいアブストラクトとなります。

他の事例も参考になるので、朝日新聞デジタルのページを確認してみてください。

効果的なアブストラクトを書くためのヒント3つ

効果的なアブストラクトの書き方を考える際、いくつかポイントがあります。

以下、3つのヒントを紹介します。

①論文を先に書いてからアブストラクトを作成する

アブストラクトは論文の冒頭に配置されますが、執筆の順序としては最後に書くべきです。論文全体を書き終えてから作成することで、研究の全体像を把握した上で、最も重要な情報を抽出し、簡潔に要約することができます。

②簡潔さを心がける

アブストラクトは限られた文字数で書かれるため、無駄な表現を1文字でも減らし、簡潔にまとめることが重要です。冗長表現や繰り返しは避け、要点だけを伝えることを意識しましょう。

③専門用語の使い方に気を付ける

アブストラクトは、専門家だけでなく、他分野の研究者や一般読者にも読まれる可能性があります。専門用語の多用は、読者を混乱させる可能性があるため、慎重に使うべきです。また、略語の使用も控えめにし、使用する場合は初出時に定義を示すと良いでしょう。

【まとめ】アブストラクトの正しい書き方を身につけよう

今回の記事では、研究論文におけるアブストラクトの書き方について、まとめました。

主なポイントは、以下の通りです。

  • 論文全体を読むかどうかはアブストラクトに懸かっている
  • アブストラクトは目的・方法・結果・結論の4つの要素を入れるのが基本テンプレート
  • 論文のエッセンスを抽出し、簡潔かつ滑らかに繋げて作っていく
  • 論文全体を書きあげた後にアブストラクトを作成するのが重要

研究者として、自分の成果を他者に伝える能力は非常に重要です。

効果的なアブストラクトは論文を読んでもらうための「入り口」です。第一印象を魅力的にすることで、論文全体への関心を引き寄せましょう!

本記事が、魅力的で効果的なアブストラクトを作る参考になれば幸いです。

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