大学院、博士課程は実際どのくらい忙しいのでしょうか?
研究活動・ゼミ・アルバイト…博士学生が普段どんなことをしているのか、イメージできない人もいるかもしれません。
- 学部生、修士学生、博士学生の忙しさの違いは?
- 博士課程では何をしている?
- 博士学生の研究時間は一日10時間を超える?
このような情報を、記事にまとめました。
本記事では主に「博士後期課程(以下、博士課程)」の実態を紹介しながら、博士学生の生活イメージをお伝えします。
これから博士課程に挑む人や、就職するか進学するか迷っている修士学生などは、ぜひ参考にしてみてください。
大学生と大学院生の忙しさの違いとは?
まずは、大学の学部生と、大学院の修士学生、博士学生の忙しさの違いを簡単に紹介します。
学部生
学部生は4年間で「卒業に必要な単位取得」を目指します。幅広い科目の中から好きな講義を選択し、レポートや試験に挑んで、単位を取得する…この繰り返しが基本です。
理工系においては、学部3年生か4年生で研究室に配属され、少しずつ研究にも関わるようになります。
学業以外にも比較的時間の余裕があるため、アルバイト・部活動・サークル活動に励む学部生も多いのではないでしょうか。
修士学生
修士学生として大学院に進むと、研究室にて「研究活動」をする場面が増えてきます。ただ、幅広く講義を受けて単位を取得することも継続して行われ、いわゆる「研究漬け」になることはありません。
2年間で修士論文を書くことが求められますが、教授や先輩のサポートを受けながら進めていくのが一般的です。
博士学生
博士課程に進学すると決めた時から、教員からの期待値が大きく変わります。したがって、学部・修士の頃と比べ、自分の研究のために費やす時間は多くなります。講義を受けて単位を取るという学び方はなくなりますが、先行研究を調査し、実験計画を立て、その妥当性について議論し、実際に実験を行い、結果について指導教員に報告し、学会に参加し、論文を書き、何度も直される…という生活になります。
しかしながら、「研究漬け」というわけにもいきません。博士学生は研究室の中でも中核的なポジションになりますので、学部や修士の学生を指導したり、研究室内外のミーティングアレンジやその進行役を務めることもあるでしょう。「外でアルバイトをしている暇がない」という声も多いです。
以上、学部生・修士学生と比較すると、博士学生は格段に忙しいのが実態です。
博士課程では何をする?
博士後期課程では一般的に、どのようなことをしているのでしょうか?
所属する研究室によって違いはあるものの、以下5つが挙げられます。
- 研究活動
- ゼミ・セミナー
- 指導教員の手伝い
- 後輩指導
- 就職活動
それぞれ、解説していきます。
研究活動
当然ながら、博士課程の学生にとって「研究活動」が最も重要です。
研究成果をあげるため、文献の読み込み・実験・フィールドワーク・データ収集・思索・計算・分析・考察などなど…を行います。
特に、文献(書籍・論文)を読み込むのは博士課程においては「日常的な活動」となります。
自分が追求したいテーマを他の研究者が既に発表しているケースもありますし、他の論文からヒントを得て研究の方向性が決まることもあります。また、英語論文を参照することも多く、英語力の向上も必要になります。
その他、分野によって違いはありますが、ラボ内での進捗発表やディスカッション、学会発表、論文・書籍執筆なども重なると、眠れないほど忙しい時期が出てくることも。もちろん、最終的には博士論文を完成させないと修了できないため、やるべきことは次から次へとたくさん出てきます。
後ほど詳しく紹介しますが、博士学生の研究活動は、一日10時間を超えているというデータもあります。
ゼミ・セミナー
所属大学や研究室ごとに呼び方が違いますが、ゼミ・セミナーという活動があります。
理工系では研究室のメンバーが集合し、各自の研究について進捗報告をしたり、それに対してディスカッションをしたり、教員からの指導が入ったりします。
人社系では定期的に集まることは少なく、担当教員がマンツーマンで研究指導してくれるケースの方が多いようです。
研究活動は基本的には孤独な作業になりますが、定期的にゼミがあることで、教授や先輩後輩とコミュニケーションをとりながら研究を発展させていくことができます。
指導教員の手伝い
博士課程では、指導教員の手伝いをすることも増えてきます。
研究室は1つのコミュニティなので、自分の研究だけでなく、雑務をチームで分担することも必要になります。
研究室の掃除から、実験の準備、資料作成など、様々なタスクが発生します。自分の研究活動に専念したい気持ちもあるかもしれませんが、雑務をこなすことが気分転換になるという意見もあるようです。
後輩指導
博士学生は、ラボ内では中心的なポジションになってきます。
研究室に新たに入ってきた学生(学部生・修士学生)に対して、指導する機会も増えてきます。ラボ内の基本的なルールや実験のやり方、論文の読み方など、場合によっては手取り足取り指導する必要が生じ、これも相当な時間を使うことになります。一方で、後輩に指導することで研究室全体が回っていきますので、無くてはならない重要な役割です。
教えることで自分の学びになる面もありますし、先輩に教わったことを後輩にリレーしていくことで、研究室の「伝統」のようなものが受け継がれていきます。
就職活動
博士課程でも、就職活動に取り組む必要があります。
近年は博士早期選考の日程が早期化しており、業界・会社によっては博士課程2年目(D2)の夏前にエントリーが開始する場合もあります。詳しくは「早期選考アリ】博士課程の就活はいつから?スケジュールと事前準備」の記事で解説しています。
研究活動を継続する中で、業界分析・エントリーシートの作成・面接対策などをするにはなるべく早い段階から事前準備を開始することが大事です。
忙しい博士学生は就活の準備不足となるケースも少なくありません。研究と就活を両立するためには、博士学生の就職活動を専門的に支援する「博士情報エンジンwakate」などのサイトを活用してみましょう。
博士課程の研究時間は…公務員以上?
博士課程の研究時間は、「社会人以上になる」とも言われています。
研究室によっては、コアタイムという「研究室で研究をしていなければいけない時間帯」が設けられていることも。9時~17時など、公務員と同じような拘束時間で研究に励む学生も多いです。
「全国大学生協連:院生の1日」というアンケートによると、平均登校日数は「5.1日」で、休日にも研究室に来ている学生が多いことを示しています。
また、コアタイムがない研究室における平均研究時間は、修士生で一日8.8時間、博士学生で一日10.0時間というデータがあります。
一日平均10時間も研究活動をしているというだけで、どれだけ博士学生が忙しいかが分かりますね。
※もちろん、研究室や研究テーマによって差があります。
修士と博士はどっちが忙しい?
「修士と博士はどっちが忙しいの?」という疑問を持つ人もいるようです。
記事の前半でも触れましたが、結論としては圧倒的に博士学生の方が忙しいと言えるでしょう。
先ほどの平均研究時間のデータを見るだけでも、博士学生の方が多忙です。また、修士学生の多くは、教授などからテーマをもらい、ある程度の指示を受けて研究活動を行い、修士論文を書き上げます。
しかし、博士課程では自ら研究テーマを見つけ出し、新たな研究成果を生みだすことが求められます。教授会の審査が必要な博士論文を仕上げることも大変ですし、その前段として専門家による査読を伴う学術誌に論文を掲載する必要があります。さらに、前述の通り、ラボ全体の運営にも関わっていきますので、「忙しくない」と言えば嘘になります。
【まとめ】博士課程は忙しくて大変な分、成長も大きい
今回の記事では、博士課程ではどんなことをしているのか、どの程度忙しく大変なのかを、紹介してきました。
大学院に進学すると、単純に「勉強する」という考え方から、ひとつのテーマを「研究する」という考え方に変化していきます。
忙しい時期には深夜まで研究を続けたり、研究室に泊まり込みで実験をする博士学生もいるようです。「このような研究をしたい」という主体性や、時間管理の概念・能力がないと、やることが多くて忙殺されてしまうことも…。その分、自分の能力や資質を大きく成長させることができるのも博士課程ならでは、と言えます。
自分ひとりですべてを抱え込まず、担当教員や先輩後輩などと連携しながら研究を進める意識も大切です。もちろん、時には趣味や休養の時間も確保しましょう。
今回の記事が、博士課程の生活をイメージする助けになっていれば幸いです。
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