博士号を取りやすい国は?アメリカ・ヨーロッパなど期間や費用を比較

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博士学生の中には、様々な理由・事情によって海外の大学院を目指す人がいます。

そこで気になるのが、海外の大学院博士課程へ進学することで「博士号を取りやすい」ということはあるのか…?という点です。

学位取得までの期間、研究環境の充実度、収入と支出のバランス、生活のしやすさ、将来のキャリアパスなどなど、様々な要素が関係しますので、「博士号を取りやすさ」 というのは、人によって捉え方が異なるものです。

そこで、今回の記事では、アメリカ、ヨーロッパ、アジアなど、海外の博士号取得の現状や、それぞれの国の特徴、そして取りやすい国があるかどうかについて、考察します。

海外と日本の博士号取得者数の比較

前提知識として、諸外国と日本の博士号取得者数を見てみましょう。


引用:NISTEP「学位取得者の国際比較」

主要国の博士号取得者数を人口100万人当たりで見ると、日本は2019年度で120人と、他国と比べて少なく、また2008年と比較して減少していることがわかります。

また、研究大国のイメージがあるアメリカよりもドイツやイギリスの博士号取得率が高く、さらに、アジアでは韓国の伸びが著しいです。

このデータから単純に結論付けることはできないものの、日本と比較してアメリカ・ヨーロッパ・(韓国)では、博士号取得の基礎的土壌が整っている可能性が高いです。

博士号を取りやすい国とは?

博士号の「取りやすさ」は一概に定義することはできませんが、主に以下の要素が関わってくるでしょう。

  • 研究環境:国内か海外かに関わらず、自分の研究テーマを追求するために最適な指導教員がいて、十分な研究環境が整備されているかどうかが、何を置いても重要です。
  • 学費と滞在費(物価の高さ):学費や滞在費が高額だと、博士学生にとって大きな負担となります。数年間に渡る支出を賄えるかどうか…慎重なプランニングが必要です。
  • 語学要件:基礎的な英会話が必要となるのは当然ですが、現地語の必要性が高いとさらにハードルが高くなります。

これらの要素を考慮して、各国の博士号取得に向けた状況を比較してみましょう。

以下に、アメリカ・ヨーロッパ・アジアの主要国の大雑把な博士課程の概要について見ていきます。

アメリカ・ヨーロッパ・アジアの博士号取得事情の比較

海外で博士号取得を目指す際に考慮すべきポイントは、多岐にわたります。またそれぞれの重要度は人によって異なります。あくまでも一般的な傾向として、以下のような特徴をまとめました。

項目アメリカヨーロッパアジア
期間目安4~6年3~4年3~4年
費用高い学費は安いが生活費は高額比較的安い
研究環境世界トップレベルの大学多数歴史ある大学多数発展中
競争率中程度中程度
言語英語英語が一般的、一部の国では現地語が必要英語が一般的、一部の国では現地語が必要
その他特徴多様な研究分野、奨学金制度充実ワークライフバランス経済成長、将来性のある研究分野

その他、学費や生活費、奨学金制度、ビザ取得の容易さ、修了後のキャリアパスなど、各国によって異なる点を理解しつつ、自分の研究を追求しやすく、理想とするキャリアを築きやすい環境を選ぶことが重要です。

以下、アメリカ・ヨーロッパ・アジアの順で、博士号を取る際の基本情報を紹介していきます。

アメリカでの博士号取得

アメリカでの博士号プログラムの期間は、「通常4〜6年かかる」と、「What is a Doctorate Degree? | How Long Does it Take?」に記載があります。

プログラムの最初の2年間は、コースワークと試験が中心となり、その後の数年間で独自の研究を進め、論文を執筆します。日本の博士後期課程よりも、在籍期間は長くなるようです。

また、アメリカの大学は学費が高額なことで知られています。年間の学費は公立大学で1万ドルから3万ドル、私立大学では3万ドルから5万ドル以上かかることもあります。なお、アメリカの学費は上昇傾向にあります。さらに、都市部では生活費も高いです。(参考:UCLA大学院の学費・予算

一方で、日本と大きく異なるのが収入面です。アメリカでは、博士課程学生に給与が支払われ、また、政府や民間団体からの奨学金も多く存在します。実質的に博士課程の学費が無料になるケースもあります。

最後に、アメリカの大学院は世界中から進学希望者が集まるため、入学競争率が高くなります。優れた研究計画や推薦状、学業成績に加えて、高いTOEFLスコアも必要となるでしょう。

ヨーロッパでの博士号取得

ヨーロッパの博士課程の期間は国や専攻によって異なりますが、通常3〜4年程度で、日本と同様です。ヨーロッパの博士課程は、授業の履修義務がなく、論文の本数や質によって修了が決められます。

例えばミュンヘン工科大学の博士課程では、『一流国際会議に 2 本、一流国際論文誌に 1
本論文を通していること
』が修了要件で、ハードルは高いようです。(引用:J-stageの留学体験記

また、ヨーロッパの多くの国では、学費が非常に安いか、無料の大学もあるのが特徴的です。

例えば、ドイツやノルウェーの公立大学では学費が基本的に無料で、登録料(共済費)のみで済むことが多いです。フランスなども公立大学の学費は非常に低く抑えられています。一方、物価が高いため、生活費は基本的に高額になります。(参考:DHIH Tokyo留学くらべーる

また、ヨーロッパでは労働時間の管理が厳格で、博士学生にも休暇の取得が奨励されます。また、博士に給与が出たり、奨学金制度が充実していたりすることで、経済的ストレスも少ないです。比較的、ワークライフバランスに優れていると言えるでしょう。

なお、ヨーロッパの大学への入学は、研究計画や推薦状が重視されると言われます。競争力の高い大学では、TOEFLやIELTSの高いスコアが必要ですし、ドイツやフランスなどでは、現地語のスキルがあるとさらに良いでしょう。

最後に話題の一つとして書いておきますが、イギリスなどの一部の大学では、博士号取得にあたって投稿論文が必要とされないことがあります。外部ジャーナルへの論文発表要件が存在せず、審査委員との諮問で学位が授与されるわけです。もちろん、3年以上かけて博士論文に取り組みますし、諮問も厳しく実施されるため、「博士号を取りやすい」と言い切ることはできませんが、少なくとも論文投稿に追われることは少なくなりそうです。(参考:イギリス研究留学体験記

アジアでの博士号取得

アジアの博士号プログラムの期間は一般的に3〜4年で、研究の進捗状況によって延長する博士もいるという、日本と同様の文化です。

アジアの大学は、欧米と比較すると学費が安く、生活費もリーズナブルと言えるでしょう。例えば、ソウルや北京のような大都市では高めですが、地方都市では比較的安価(とはいえ日本と同じか高いくらい)で生活できます。(参考:AMERICAN EXPRESS

アジアには多くの奨学金制度があります。例えば、中国政府のCSC奨学金などがあります。これらの奨学金は、学費免除だけでなく、生活費の支給も含まれており、経済的な負担を大幅に軽減できます。また、各大学も独自の奨学金制度を持っていることが多いです。

アジアの大学への入学は、研究計画や学業成績が重視されます。韓国、中国のトップ大学では、厳しい入学試験が課されることもあります。語学要件については、韓国では現地語のスキルが求められることが多いです。(ソウル大学に語学堂という施設もあります。)なお、中国では、英語の他にHSK(漢語水平考試)のスコアが求められることもあります。

まとめ

今回の記事では、「博士号を取りやすい国」をテーマに各国の博士号取得事情について解説しました。

国や地域、さらには大学によって博士号取得をめぐる環境は少なからず異なります。博士号取得は長期にわたる挑戦ですので、個人の研究能力はもちろん、研究環境や生活環境、文化、費用なども関係し、その影響も大きくなるからです。何を重視するかにもよりますので、結論として、博士号が「取りやすい」か「取りにくい」か、人によって異なるとも言えそうです。

最終的には、「自分の研究目標を達成しやすく、自分が前向きに挑戦できる環境」を、自分で見つけて進んでいくしかありません

海外での博士号取得には、日本とは違う困難さもありますが、それは同時に、自分の専門性を極め、研究者としても人間としても成長し、国際的な研究コミュニティの一員となる素晴らしい機会でもあります。ぜひ、幅広い視野で検討してみましょう!

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