博士号が取りやすい大学はある?大学別に取得者数をまとめてみた

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ズバリ…「博士号が取りやすい大学」は存在するのでしょうか?

結論から言うと、大学によって博士号の取りやすさに違いはありません。当然ながら、出身大学によって博士号の価値が変わったりもしません。

とはいえ、明らかに東京大学は博士号取得者の人数が多いです。これは「取りやすい」と言えないのでしょうか…?

今回の記事では、博士号取得者数を大学別にまとめ、学位の取りやすさ・取りにくさについて解説しました。

【前提】大学によって博士号の取りやすさに違いはない

博士号を取りやすいかどうかは、大学の知名度・規模などによって決まるものではありません。

つまり、「博士号を取りやすい大学」なんてありません

博士号は、研究者としての能力と独創的な研究成果を、客観的に評価して授与される学位であり、その審査基準は世界的にある程度統一されています。

もちろん、実務上は、各大学(研究科・専攻)が予備審査・本審査を実施し、博士号の授与を判断することになっています。ただし、それらの学位審査を受ける前提として、「査読付き論文」のアクセプトが条件になっているため、研究成果の評価にはグローバルなレベルでの客観性が一定程度伴っていると言えるでしょう。

以上のような大前提を踏まえつつも、大学によって博士課程在籍者数や研究環境に差があることは事実であり、これらの要因が間接的に博士号取得の難易度に影響を与える可能性があります。詳しく見ていきましょう。

博士号取得者の約7割は国立大学

NISTEPの「日本の博士号取得者」によると、博士号取得者の約70%が国立大学の出身です。

2018年度の博士号取得者数は国立大学で10,351人(全専攻の68.4%)、公立大学で896人(同5.9%)、私立大学で3,896人(同25.7%)となっている。2005年度と最新年度を比較すると、国公私立大学ともに博士号取得者数は減少している。

NISTEP:日本の博士号取得者より引用

国立大学は研究施設として伝統と歴史があり、充実した研究設備や人材、または研究資金を有していることが主な要因と考えられます。シンプルに考えれば、博士号を取りたいのであれば国立大学が第一の選択肢となるでしょう。

ただし、これは必ずしも国立大学で博士号が取得しやすいことを意味するわけではありません

続いて、大学別の博士号取得者数を見ていきましょう!

博士号取得者数を大学別にまとめた

博士号取得者数を、主要大学別にまとめました。

「博士課程入学者数」「博士号取得者数」「取得者数÷入学者数」について、公表されている直近年度の数字を並べていきます。並びは2023年度の博士課程入学者数が多い順で、数字部分は各大学データへのリンクになっています。

上記の通り、有名大学ではおおむね入学者に対して6~8割程度の割合で学位取得者数が輩出されています
(※年度ごとに入学者数や学位取得者数にそこまで大きな変動は見られませんが、比較している年度が異なるなど、厳密なデータではありません。読み物のひとつとして参考にしてください。)

「研究設備・教員数・博士学生数などが博士号の取りやすさに影響するのではないか」という考えを持つ人もいますが、例えば東京大学が他の大学と比べて突出した割合になっているわけでもありません。

また、様々な事情で博士課程を中退する人もいるものの、最高学位である博士号を、進学者のうち8割程度は取得できると考えれば、案外高いのではないでしょうか。

博士号が取りやすいかどうかにかかわる要因は?

博士号が取りやすいかどうかを考える際、「どの大学に入るか」よりも重要な要因が3つあります。

①研究領域・研究テーマ

研究テーマの選択は博士号取得の難易度に大きく影響します。自分が熱意を持って突き詰めたい内容で、かつ新奇性があり、周りを説得できるような材料を揃えやすいテーマが最も「取りやすい」と言えるでしょう。当該分野での最新の研究動向を把握し、自身の研究が学術的に貢献できそうかどうかを事前によく検討しておくべきです。

ちなみに、理系と比べると文系博士は学位取得までに比較的時間がかかる傾向があります。「文系博士号は難しい/取れない…何年かかる?」という記事でも解説しましたが、文系が博士号取得まで時間がかかる傾向にあるのも、新規性や学術的貢献度のある研究テーマを設定しにくいから、と言えるかもしれません。

②指導教員

指導教員の研究スタイルや指導方針は、博士学生の研究の進め方に大きな影響を与えます。適切な指導と支援を受けられるかどうかは、研究の質と効率性に直結します。また、「人脈」と言ってしまうとあからさまですが、実際のところ指導教員の人的ネットワークや資金獲得力、業界内での評価も、研究環境・機会の獲得などに影響します。

教員との個人的な相性も重要な要素なので、自分の研究が最も進めやすい環境を見極めましょう。

③研究に没頭できる環境

研究設備、資金、時間的余裕は、質の高い研究を行う上で不可欠です。多くの国立大学や一部の私立大学では、充実した研究設備と豊富な資金を有しています。(もちろん、どの大学も研究資金の獲得には苦労していますが…。)

ティーチングアシスタント(TA)やリサーチアシスタント(RA)だけでなく、学費や入学金の減免措置など独自制度を通じて、博士学生が経済的支援を受けながら研究活動に専念できる環境を整えている大学も多いです。また、近い研究テーマに取り組む仲間や、異なる分野の研究者との交流も、研究の質を高める助けとなります。

博士号取得を考えるなら大学よりも研究テーマと自分のスキルを

博士号取得を目指す際は、大学の知名度や学位取得者数あるいは博士課程の学生数などを気にするよりも、自分が追求したい研究テーマを見つけ、一人前の研究者として成長していくことに注意を向けるべきです。

そのうえで、「どの大学(研究室)が、自分にとって最も適切な研究環境か」という観点で大学を選ぶのが正しいでしょう。

いずれにしても、日本において博士号取得者は全人口の0.4%という希少な高度人材で、また「文科省が「博士人材活躍プラン」を発表!2040年にドクター3倍へ」の記事で解説した通り、今後、博士は社会的な活躍が大いに期待されています!

どの大学なら博士号を取りやすいかではなく、研究者としてのビジョンを明確にし、将来のキャリアプランを思い描きながら、研究に専念できる環境を選びましょう!

まとめ

今回は、博士号を取得しやすい大学はあるのか、というテーマを取り上げました。

大学別に見ると、やはり国立大学の博士号取得者数が多いのは事実ですが、これは博士課程入学者数も多いからであり、一概に「博士号を取りやすい」とは言えません。

学位取得に当たっては、どの大学なら取りやすいか…ということを考えるよりも、個人の研究能力・研究への向き合い方・環境との相性が重要です!

最終的には、「このテーマを突き詰めたい」という研究に対する情熱と努力が、博士号取得の鍵となることは間違いありません。研究者としての専門的な研究力やトランスファラブルスキルを磨くことに集中しましょう!

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