博士課程の奨学金っていくら? 給付型や返還免除を含めて解説

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奨学金の種類は? どのくらいの金額をもらえる?

一般的に広く利用されるのは、日本学生支援機構の奨学金です。貸与型奨学金だけでなく、返還する必要のない給付型奨学金や優れた業績を修めた学生を対象とした返還免除制度など、経済的な負担を軽減できる有用な制度があります。また、博士課程で独自の奨学金制度を設けている大学もありますので、どちらも把握していきましょう。

 

日本学生支援機構の奨学金

独立行政法人日本学生支援機構(Japan Student Service Organization:JASSO )のホームページには下記のような目的が書かれており、経済的な理由で修学が難しい優れた学生を対象に、奨学金として学資の貸与および給付を行っています。

「我が国の大学等において学ぶ学生等に対する適切な修学の環境を整備し、もって次代の社会を担う豊かな人間性を備えた創造的な人材の育成に資するとともに、国際相互理解の増進に寄与すること」と規定されています。

引用元:https://www.jasso.go.jp/about/organization/jigyougaiyou.html

【奨学金の種類】

日本学生支援機構の奨学金は「貸与型」と「給付型」の2種類があり、貸与型は返還が必要ですが給付型は返還が不要です。それぞれの特徴は次の通りです。

貸与型奨学金

貸与型奨学金は、第一種奨学金(無利息)・第二種奨学金(利息付)の2種類に分けられます。なお、博士課程で受給できる奨学金は月額80,000円もしくは122,000円(2020年8月時点)となっています。

(参考:独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)「平成30年度以降入学者の貸与月額」https://www.jasso.go.jp/shogakukin/seido/kingaku/1shu/2018ikou.html

給付型奨学金

経済的な理由で進学を諦めてしまう人を減らすため、2020年4月から給付奨学金の対象者が広がりました。これまでは成績もひとつの判断基準となっていましたが、世帯収入の基準を満たし、「学ぶ意欲」があれば支援を受けられるようになったのです。また、給付型奨学金の対象となれば、授業料・入学金も免除あるいは減額されます。

さらに、2020年に発現した新型コロナウイルス感染症による影響で、アルバイトができずに学費を捻出できないなどの状況をふまえ、学びの継続のための学生支援緊急給付金が創設されています。

返還免除制度(業績優秀者へのインセンティブ)

貸与型奨学金でも、返還が免除されるケースがあります。在学中、特に優れた業績をあげた学生を対象とした制度であり、令和元年度においては大学院第一種奨学金の貸与が終了した24,638名のうち、36%以上がこの返還免除制度を利用しています。

この制度では、奨学金の貸与が終了した月が属する年度に大学への申請を行い、日本学生支援機構の審査を経て、認定されれば奨学金の全額または半額の返還免除が受けられます。

大学独自の奨学金

独自の奨学金制度を設けている大学も少なくありません。以下に幾つか事例を紹介しますが、ご自身が進学したい大学でもこのような奨学金が設けられていないか、まずは調べてみましょう。

東京電機大学

東京電機大学独自奨学金

https://www.dendai.ac.jp/about/campuslife/e5vdec0000000bf6-att/e5vdec0000005mq8.pdf

博士課程のみの特別奨学金は、531,333円が支給額となっています。2019年度では、先端科学技術研究科で28名の採用実績があります。

横浜国立大学

授業料・奨学金 - 学修支援 - 横浜国立大学 大学院・国際社会科学府 国際経済法学専攻
横浜国立大学 大学院 国際社会科学府 国際経済法学専攻のホームページです。

博士課程前期・後期学生を対象にした、各学期の授業料の全額または半額が免除される制度です。免除額は、全額免除が267,900円、半額免除が133,950円となっています。

なお2018年度では、127名が全額免除、93名が半額免除を受けたという実績があります。

その他大学による奨学金(※五十音順・カッコ内は2020年現在の奨学金制度の名称)

青山学院大学(若手研究者育成奨学金)

沖縄科学技術大学院大学(リサーチ・アシスタントシップ)

高知工科大学(給付奨学金)

総合研究大学院大学(授業料の免除等)

東京工業大学(つばめ博士学生奨学金)

東京理科大学(博士課程学生対象経済支援制度)

東北大学(博士研究教育院生)

豊田工業大学(豊田奨学基金奨学金)

名古屋大学(下駄の鼻緒奨学金)

日本学術振興会特別研究員

奨学金ではありませんが日本学術振興会の特別研究員制度(いわゆる学振DC)についてもご紹介します。これはご自身に「研究奨励費」が入るだけでなく、研究費の助成を受けることもできるなど、博士課程学生の経済的な負荷を大きく軽減し、さらに研究推進にも役立つ制度です。人文学や社会科学および自然科学の全分野が対象となり、博士課程の学生全員が応募する研究室もあるようです。競争的研究資金獲得への入り口としても、チャレンジする価値は大きいでしょう。

研究奨励金 2021年度の支給予定額は以下のとおりです。なお、研究奨励金の額については変更されることがあります。

 (1) 特別研究員-DC1:月額200,000 円

(2) 特別研究員-DC2:月額200,000 円

その他、博士課程でお金がもらえる機関

上記のほかに、民間団体、企業や公的機関による奨学金もあります。新たに奨学金制度を開始する機関もありますので、調べてみましょう。

◎その他の団体等による奨学金

山田長満奨学会

本庄国際奨学財団 日本人大学院生奨学金

吉田育英会 ドクター21

中谷医工計測技術振興財団

長谷川財団奨学金

旭硝子財団

武田科学振興財団

日本化学工業協会

計画的な返還が必要

貸与型の奨学金は、たとえ「無利子」だとしても返還(返済)が必要となりますので一種の借金であることは間違いありません。金額も大きくなりますので、必要以上に借りすぎないことを認識しておくこととともに長い年月をかけて返還していくことになりますので、在学中からお金の使い方についてよく考えておきましょう。

特に博士課程では研究活動に費やす時間が多くなり、学部・修士と比べてアルバイトも難しくなることも少なくありません。Excelなどを使った簡単なもので構わないので、学費、学会参加費、書籍購入費、食費、住宅費、光熱費などの収支管理を行い、実際に自分にはどのくらいの支援が必要かを把握しておきましょう。

奨学金の返還について考えると不安になってしまうかもしれませんが、博士号の取得や、その過程で得た知識、経験などは、それ以上のリターンをもたらす可能性が十分にありますので、決して悲観的になる必要はないでしょう。 

また、返還免除制度などがある場合はこれを活用できるよう制度をよく理解しておくことも重要です。その上で、勉学・研究活動に励み、充実した博士課程を過ごしてください。

まとめ

博士課程の奨学金は、残念ながら全員がもれなく利用できるものではありません。しかしながら、経済的な不安がある場合はぜひとも活用を検討すべきでしょう。

また、2020年には新型コロナウイルス感染症の影響を受けて新たな支援制度が創設されるなど、奨学金に関する状況は社会情勢等を受け毎年変化していきます。そのため、定期的に日本学生支援機構(JASSO)のホームページなどで最新の情報をチェックするようにしましょう。

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