学部生の留学が語学力向上や異文化体験に重きを置くのに対し、博士課程の留学はあくまでも研究が目的です。
「どんな環境でも周囲とコミュニケーションをとり、研究をやり遂げた」という経験は、研究者としてのキャリア形成において重要な意味を持ちます。
専攻分野にもよりますが、博士は修士よりもはるかに留学のチャンスが多いため、各自アンテナを張り、チャンスを逃さないようにしたいところです。
また、近年、博士の留学に対しては各種奨学金も整備されています。
今回の記事では、博士課程の学生向けに、留学のメリットや費用、利用できる奨学金制度について解説します。
博士課程での留学は、学部生の短期留学・交換留学とは根本的に違う
学部生が参加する「短期留学」や「交換留学」は、語学力の向上や異文化体験が主な目的です。
一般的に、短期留学は数週間から数か月程度の期間で、交換留学や派遣留学の場合は、半年から1年間などのプログラムが多いです。
しかし、博士課程の留学は学部・修士での留学と根本的に異なります。
繰り返しになりますが、博士課程の学生が留学するのは、研究のためです。
英語は「学びに行く」のではなく、「できることが前提」とみなされ、そのうえで知識やデータを得てくるのが目的です。
とはいえ、研究の現場で英語を使って共同研究やディスカッションをすることによって「生きた英語力」を得られるのもメリットですし、人間としても研究者としても自信を持てるようになる、貴重なチャンスでもあります。
なお、博士課程では短期留学、交換留学という言葉もほとんど使われず、実験を目的に複数回に分けて行くこともあれば、数年間に渡って滞在することもあります。
博士課程では研究室や指導教員の都合で留学に行くチャンスが多い
博士課程の留学は、「この期間で、この予算で行こう」と自分で計画するよりも、研究室や指導教員の都合や予算で急遽決まることがあります。
分野にもよりますが、何人の博士をどのくらいの期間で留学させるかを予算計画に入れているケースもあります。
指導教員が獲得した研究費や、海外の共同研究者との繋がりから「来月から〇〇大学に行けるけど…」といった形で、突然チャンスが舞い込んでくるのです。
このような場合、費用はある程度研究費でカバーされるため、金銭的な負担が比較的少なく貴重な経験を積めます。
こうしたチャンスを逃さないためにも、日頃から自分の研究活動に真摯に取り組み、周囲に留学への意欲をアピールしておくことも重要です。
博士課程で留学をするメリットと価値
博士課程で留学することは、研究者としてのキャリア形成において重要な意味を持つことがあります。
大きく分けると、以下4つのメリット・価値があります。
- 英語で研究を遂行する能力の獲得
- 国際的な研究ネットワークの構築
- 自立した研究者になるための経験
- キャリアの選択肢を広げる機会
それぞれ、簡単に解説します。
①英語で研究を遂行する能力の獲得
留学は、アカデミックな環境での語学スキル向上の絶好の機会となります。
博士学生相手であれば、受け入れ先も「英語はできるのが前提」としてコミュニケーションしてきます。
そういう環境の中で、英語でのディスカッション、セミナー発表、論文執筆といった研究活動のあらゆる場面で通用する専門的かつ実践的な語学環境に身を置くことの価値は大きいです。
日本では得難い生きた英語を使う環境で過ごすことで、帰国後はコミュニケーションに対する自信もつくでしょう。
②国際的な研究ネットワークの構築
海外での研究を経験することで、世界中から集まった研究者や学生との交流の機会が得られます。
ここで築いたネットワークが、共同研究のきっかけや、最新の研究情報を交換する基盤となり、研究者としてかけがえのない財産となる可能性があります。
③自立した研究者になるための経験
海外の研究機関では、設備だけでなく研究の進め方やコミュニケーションの文化も日本の研究室とは大きく異なります。
そのような慣れない環境に適応し、柔軟に新たな視点や方法論を取り入れながら研究を推進する経験は、「自立した研究者」になるための絶好のトレーニングです。
どんな環境でも研究を遂行して成果を出せるという適応力とマインドセットが養われ、一つの研究室に依存しない、自立した研究者になるための貴重な経験となるでしょう。
④キャリアの選択肢を広げる機会
博士号取得後のキャリアを考えても、留学経験は強みになります。
留学自体が価値になるというよりは「現地で何を試行錯誤し、どんな過程で、どのように成長したのか」が重要ですが、自己PRの材料にしやすいことは間違いないでしょう。
なお、分野にもよりますが、競争の激しいポストの公募では、海外経験が暗黙の前提条件となっていることもあるほどです。
また、留学経験は博士自身のキャリアの考え方を広げることにもなります。
語学面や文化面で適応できるという自信が付くことにより、これまで選択肢に入っていなかった海外ポストや、グローバル企業への挑戦に対するハードルが下がり、より幅広い視野でキャリアを考えられるようになります。
博士課程の留学はいつ行くのが良いのか?
博士の留学はいつ行くべきか?という質問にあえて答えるのであれば、「行ける時に行くべき」ということになります。
少し厳しい言い方になりますが、「忙しいから留学に行けない」というのは、博士にとってはナンセンスです。
「D1の秋に行こう」「D2の夏に行こう」などと事前に計画を立てるよりも、予期せぬチャンスが舞い込んだ時に、他のスケジュールを組み直してでも行く、という姿勢が重要です。
例えば、企業の就職活動と留学の時期が重なっても、簡単に諦めてはいけません。まずは、企業に素直に相談してみましょう。博士の採用活動は柔軟に対応してくれることも多く、熱意が伝われば、留学中にオンライン面接をしてくれたり、帰国後に最終面接の機会を設けてくれたりするケースもあります。
留学は「チャンスがあれば行くもの」と決めておくことで、博士論文も就活準備も自然と早めに進むはずです。
就職活動のスケジュールなどについては、「博士情報エンジンwakate」でも最新情報を公開していますので、チェックしてみてください。
博士課程での留学にかかる費用の目安
博士課程の学生が留学する際の費用は、ラボからの支援の有無、留学先、期間によって大きく異なります。
前述の通り、研究室の予算で留学に行けることも多いです。
ここでは、あくまでも一例ですが、個人で欧米への3か月間の短期留学をした時の主な費用項目と一般的な金額の目安をまとめました。
- 航空券: 往復で約20万〜30万円
- 住居費: 学生寮の場合、月額5万〜15万円程度
- 食費: 月額3万〜5万円程度
- 現地交通費: 月額1万〜3万円程度
- その他の雑費: 月額2万〜5万円程度
以上、短期留学の場合、総額で約50〜100万円程度が必要になることが多いです。
事前にしっかりと情報収集し、無理のない資金計画を立てることが重要です。
節約できる部分と、安全性や研究の質を確保するために投資すべき部分を見極めて予算管理しましょう。
なお、最新の為替レートの変動も考慮に入れるのを忘れてはいけません。
博士課程の短期留学に使える奨学金制度はたくさんある
幸いなことに、博士課程の学生向けには様々な奨学金制度が用意されています。
もし、個人で留学を計画するなら、以下のような代表的な奨学金プログラムをチェックしてみましょう。
1. 日本学生支援機構(JASSO)の海外留学支援制度
博士課程の学生が活用できるJASSOの海外留学支援制度は、大学間の協定に基づく交換留学や短期プログラムを対象に、生活費の一部を月額約15万円~35万円で支給する奨学金です。
この奨学金は給付型で返済不要のため、博士課程学生にとって使いやすい制度です。
2. 日本学術振興会(JSPS)の制度
JSPSは「若手研究者海外挑戦プログラム」や「海外特別研究員」など、博士後期課程学生や若手研究者が海外の研究機関で研究活動を行うための支援制度を設けています。
「若手研究者海外挑戦プログラム」では、3か月~1年間の海外派遣に対し、派遣国によって100万円から140万円程度の滞在費などを支給します。
また、「海外特別研究員」は2年間の長期派遣も可能で、滞在費や研究活動費として年額約520万円~800万円が支給されます。
3. その他:博士の留学のための奨学金
- トビタテ!留学JAPAN: 文部科学省による海外留学支援制度
- 大学独自の奨学金制度:特に交換留学の場合、学費免除や住居費の補助などの形で支援が受けられる
- 民間財団の奨学金: 経団連国際教育交流財団やロータリー財団など、様々な民間団体が留学生向けの奨学金を提供している
なお、「大学院生の研究助成金について」という記事で紹介している「助成・奨学金情報navi」を使うと、海外留学への奨学金情報を横断的に検索できます。
【まとめ】博士なら常に留学に行くチャンスをうかがっておこう!
今回の記事では、博士課程における留学の実態や具体的なメリットについて解説してきました。
海外留学は、単に研究実績を積むだけでなく、「どんな環境でも自分は研究者としてやっていける」という大きな自信を得られる貴重な経験です。
この自信こそが、あなたのキャリアを切り拓く上での、大切な原動力となるでしょう。
また、研究室の文化や予算の都合上、留学のチャンスが少ない場合でも、近年は奨学金などの留学支援制度が充実しています。
積極的にグローバルな舞台で経験を積み、研究者としての可能性を大いに広げてください!いつでもチャンスに飛びつけるよう、日々の研究に集中し、準備を進めておきましょう。
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