博士課程の満期退学が就職に及ぼす影響│単位取得後退学で内定取り消しになる?

キャリア

「論文がアクセプトされない…」「今年度の学位取得が難しいかも…」など、スムーズに博士号を取得できずに悩むケースは少なくありません。

学士・修士とは違い、博士課程には満期退学という道があります。もし満期退学を選択した場合、就職にはどのように影響してくるのでしょうか?

  • 博士課程の満期退学の割合は?
  • 満期退学って就職にはどのような影響がある?
  • 満期退学/単位取得後退学だと内定取り消しになる?

今回のブログ記事では、上記のようなポイントを踏まえて、「博士課程満期退学と就職」について詳しく解説していきます。

博士課程の満期退学/単位取得後退学とは?

博士課程には、「満期退学」「単位取得後退学」という道があります。

満期退学/単位取得後退学の定義について、文部科学省『用語の整理に関する参考資料』では、以下のように書かれています。

大学院の課程の修了要件のうち、当該課程に在学中に、論文の審査及び試験に合格することのみ満たすことが出来ず、当該課程を退学することをいう。
 なお、大学院の博士課程を満期退学又は単位取得後退学後、当該大学院に博士論文を提出し、大学院の博士論文の審査に合格した者は、学位規則第4条第2項に規定する者(いわゆる「論文博士」)として扱うこととなる。

博士課程を満期退学すると、最終学歴は「修士卒」です。

しかし、修士2年で研究を終えた人や、博士課程を中途退学した人とは違う扱いになります

「博士課程の研究をしっかり経験してきた人」として、ある程度の評価を受けると言っていいでしょう。

満期退学者の割合は約20%に達する

学校基本調査 令和3年度 卒業後の状況調査では、満期退学も博士課程の卒業者として集計しており、博士課程卒業者のうち満期退学者の割合が約20%に達します。

理系分野では20%に満たないのですが、文系の博士課程では約半数近くが満期退学となっています。

そのような傾向を反映していたのが学振の特別研究員PDです。

本来は博士号取得者を対象とする学振PDですが、2017年までは「人文学・社会科学分野」において、満期退学者も対象となっていました

※ただ、学位授与率の上昇などを踏まえ、平成30年度採用分から学位取得者のみが対象になっています。詳細は学振の制度概要ページを確認してください。

博士課程の満期退学で、就職へどのような影響がある?

博士課程の満期退学を考える際、就職への影響を不安に思う学生は多いです。

まず、当然ながら、博士号取得が暗黙の了解になっているようなアカデミアや、一部の研究職への就職には悪影響が出ます

人文系の一部の領域や、自然科学系でも著しい業績がある場合など、学位を持たない人がアカデミックポストに就いていることもありますが、基本的には企業就職をメインに就活していくこととなるでしょう。

その一方で、学位取得にこだわらずに就職に切り替えることで、時間や心に余裕が生まれ、視野を広くしてキャリアプランを考えることができます。自己PRや企業分析などの”就活対策”を万全にする時間が生まれるのはメリットと言えるかもしれません。

また、学位取得まで数年かかりそうだった場合は、年齢の面で有利に働くと捉えることもできますね。

続いて、既に内定をもらっていた場合について見ていきましょう。

博士の満期退学で内定取り消しになることはある?

ここで、博士課程在籍中に内定をもらっており、満期退学を選択する場合について触れておきます。

結論としては、満期退学になっても内定取り消しにならないケースの方が一般的です。

スキル・経験・人格などを総合的に評価し、博士号の有無だけで判断していないことも多く、学位がなくてもそのまま就職できます。

基本的には「満期退学なら内定取り消しにはならない」と言えるでしょう。

また、稀ではありますが、半年後の学位取得が見込める場合などの条件付きで、入社時期を後ろ倒ししてくれるケースもあります。

※博士号が前提で採用していた場合もある…

しかし、博士向けの早期選考など研究職を想定した採用を行っている場合、採用側には「博士号取得者を即戦力の研究者として採用したい」「海外での活躍も視野に入れて採用したい」といった考えがあります。

そのような場合では、内定取り消しになることも珍しくありません

いずれにしても、満期退学となりそうな旨、なるべく早いタイミングで企業側に相談をするべきです。

博士課程の満期退学…履歴書にはどのように書く?

ちなみに、博士課程を満期退学した場合、当然ながら履歴書に「博士課程修了」と書くことはできません。

満期退学の場合は、「〇〇大学大学院△△学科博士課程 単位取得後満期退学」と書きます。

厳密には最終学歴は修士なのですが、博士課程での経験値はもちろんプラスに評価されるでしょう。

初任給は修士卒扱いとなる

博士課程を満期退学して就職した場合、規約上、給与体系は「修士卒と同等」からスタートすることがあります。

博士号取得者の給与が特別に高い企業も増えている中、修士扱いとなってしまうのはもったいないような気持ちにもなりますね…。(参考:博士の年収&生涯賃金は高い?給料事情を学士/修士と比較

ただ、本人のスキルや能力で給与が決まる場合もありますし、入社後に博士号を取得することでさらに給料が上がることもあるでしょう。

満期退学ではなく、学位取得の道は本当にないのか?

ここまでは満期退学する博士学生に向けて、就職への影響を考えてきました。

ただ、「本当に学位取得の道はないのか?」という話にも触れておきたいところです。

博士号の取得をあきらめざるを得ない様々な事情はあると思いますが、中には、一時的に休学や留学などを挟むことで、じっくりと博士号取得を目指す人もいます。

指導教員とよく相談したうえで、より多様な選択肢を知りたい場合などは、多くの博士学生のキャリアを支援してきた「博士情報エンジンwakate」にもご相談ください。

【まとめ】満期退学は就職へ影響はあるが、内定取り消しはほとんどない

今回のブログ記事では、博士課程の満期退学について、そして就職への影響について解説してきました。

アカデミア・一部の研究職の世界では、博士号の有無が重要視されているため、基本的にはそれらのキャリアは諦めざるを得ません。(※一部、例外はあります。)

まずは、「本当に学位取得の可能性はないのか、なにか解決方法はないのか」を冷静に考え、周りにアドバイスを求めてみましょう。

そのうえで満期退学を選択する場合には、なるべく幅広いキャリアプランに目を向け、就活対策も準備を万全にしておくのがおすすめです。

また満期退学時の内定の取り扱いは企業により様々です。既に内定をもらっている場合、入社直前になって路頭に迷うことないよう、早い段階で企業に相談しておくのが重要です

博士学生の就職活動を応援しているサービス「博士情報エンジンwakate」でも、セミナーや質問会などを開催しています。お気軽に相談してみて下さい。

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