アカデミアとは?意味と魅力を紹介【企業研究職との違いやキャリアパスも解説】

キャリア

「アカデミア」とは、学問や研究を行う学術界のことを指します。

ただ、博士の就活においては、教育機関や公的研究機関で研究を行う研究職を意味することもあります。この場合、民間企業の研究職と対比されます。

本記事では、アカデミアの基本知識について解説します。

  • アカデミアという言葉の意味と使い方は?
  • 民間企業の研究職との違いは何か?
  • アカデミアでのキャリアパスとその魅力とは?

博士学生にとってアカデミックキャリアは魅力的でありつつ、狭き門で難しいというイメージがあると思います。

今回の記事を読んでアカデミアについて正しく理解し、キャリアプランを考える際の参考にしてみてください。

アカデミアとは?意味を解説

アカデミアは本来、学問や研究を行う「学術界」を指します。

紀元前、プラトンがアテネに設立した「アカデメイア(Akadēmía)」に由来するとされていますが、現在は「学術的研究を行う教育機関や公的研究機関」を特に指すようになりました。

さらに「博士人材の就活」という文脈においては、学術機関における研究職を意味することも多いですが、正確を期するなら「アカデミックポスト」「アカデミックキャリア」と呼んだ方がいいかもしれません。

最も一般的にイメージされるアカデミックポストは、教授・准教授・助教などの大学における教育研究職です。また、産業技術総合研究所、理化学研究所などの国立研究開発法人や、公立の研究所などの公的機関における研究職もアカデミックポストと呼ばれます

アカデミックポストと企業研究職の違い

アカデミックポストと企業研究職は、研究目的・研究内容・勤務環境・評価制度・キャリアパスなどの面で、様々な違いがあります。

詳しくはこのあと解説していきますが、表形式で簡単にまとめると、以下のようになります。

項目アカデミックポスト企業研究職
研究目的真理の探究特定の製品・サービスの開発、改良
研究内容基礎・応用研究の比重が高い応用・開発研究の比重が高い
組織形態大学・公的研究機関民間企業
評価制度研究業績、教育実績など特許、製品化、貢献度など
キャリアパス助教→准教授→教授管理職になる人も

特に大きな違いとして、研究内容と目的、キャリアパスについて深掘りして解説します。

研究内容と目指す方向性

アカデミアには高等教育機関や公的機関が属するので、非営利団体です。研究者が自身の興味や関心に基づいて研究テーマを設定することができます。もちろん、大学(あるいはPI)から求められている研究成果や、教育的側面に応える必要もあるため完全に「自由にテーマを設定できる」わけではないですが、未知の領域に積極的かつ継続的に挑戦していける環境と言えるでしょう。

その一方、企業研究職では、事業戦略や市場のニーズに沿った研究が求められるため、研究領域の選択には一定の制限があります。企業のR&D戦略・予算に合わせてプロジェクトが設定され、ほとんどの場合、事業の発展に貢献するような研究開発テーマとなります。トップダウンで研究テーマが決まることもあれば、近年ではボトムアップ、つまり研究員の発案で研究テーマを決めていく企業も増えているようです。

キャリアパスと安定性

アカデミアでのキャリアは、任期付きのポストから始まり、テニュア(終身雇用)を目指すというのが一般的です。テニュアトラックを経てテニュアになるケースも少なくありません。

1年契約を更新しながら研究実績を積み上げている人も少なくありません。また、テニュアのポストはなかなか増えていないため、競争が厳しいという現実もあります。ただ、テニュアを取得すれば安定した地位や給与を得ることができます。近年では、研究者の雇用環境改善の観点から、博士号取得直後から、テニュア採用する公的研究機関なども増えています。

一方、企業研究職では、多くの場合正社員として無期雇用されるため、比較的安定した雇用環境のなかで、キャリアを積み重ねていくことが可能です。その中で成果を上げれば、昇進や昇給のチャンスを得ることができますので、キャリアパスも比較的明確です。将来的には第一線で研究する立場ではなく、管理職を任される人も出てきます。

ただ、近年はスポット的に、プロジェクト単位で契約社員として企業で働く研究者も増えてきています。

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アカデミックポストのメリット・魅力3つ

アカデミアで研究職をするメリット・魅力を3つ紹介します!

  • 自分の研究テーマを突き詰めることができる
  • 自分の意向を柔軟に反映させられる
  • 専門家との意見交換を行いやすい

それぞれ、詳しく見ていきましょう!

①自分の研究テーマを突き詰めることができる

アカデミアでは、自分で研究テーマを設定できるうえ、長期的に突き詰めることができるのが魅力です。好奇心と探求心を持っているテーマについて研究することが、そのまま「仕事」となるため、課題解決へのモチベーションを長期的に高く保つことができるでしょう!(前述の通り、所属機関から求められる仕事もあるため、完全に自由とは言えませんが。)

一方、企業研究職だと、企業の戦略に沿ったプロジェクトが求められるため、研究テーマには一定の制限があります。また、企業戦略の変更によって短期的にテーマが変更になることもあります。

②自分の意向を柔軟に反映させられる

アカデミアでは、自分の意向を研究計画に柔軟に反映させやすい環境があります。研究室のトップが立てた計画に沿って作業する一方で、自らの研究アイデアを提案し、柔軟かつスピーディに実施することも可能です。予算の制約をクリアできれば、新しいアプローチや独自の仮説を試しやすい環境だと言えるでしょう。

一方、企業研究職では、上司の許可が下りなかったり、稟議を回す必要があったり…自分の意向を即時に反映させられないケースも多くなります。

③専門家との意見交換を行いやすい

アカデミアでは、各種学会・学内外の意見交換会などに参加し、情報発信することが大事な仕事の一つです。学会や論文での発表、講演会やシンポジウムなどのイベントを通して、自分の研究テーマを広く社会に公開することがアカデミアの本質的な目的と言うこともできます。

また、他の専門家と直接交流してフィードバックを貰うことで、研究が大きく進展する可能性もあります。結果的に、人脈の構築にも繋がりやすいのがアカデミックポストの魅力です。

その一方、企業研究職の場合、ライバル企業への情報漏洩を避けるため、本質に迫るような深い情報交換には慎重にならざるを得ません。また、良い研究成果が得られても、自分の研究業績として外部に公表できないようなケースもあります。

ただ、以前と比べると、ライバル企業と共同研究して共著論文を出す事例も増えているようです。

アカデミアに関するよくある質問

アカデミアに関するよくある質問と回答を2つ、まとめました。

Q.1:アカデミアとアカデミーの違いは何ですか?

アカデミアとアカデミーは似た言葉ですが、意味は異なります。

アカデミアとは、学問や研究を行う学術界のことを指します。

アカデミーとは、特定の分野での教育や訓練を行う機関、または特定の専門家や芸術家が集まる団体のことを指します。例えばアカデミー賞は、アメリカの「映画芸術科学アカデミー」という団体が主催しています。

Q.2:アカデミックポストに向いてる人/企業研究職に向いてる人は?

アカデミックポストは、自分の研究を将来にわたって追求できるポジションです。キャリアアップして集団のトップとなっても、依然として個人的な研究成果が求められます。いつまでもプレイングマネジャーとして研究の第一線に携わり続けたい人は、アカデミックポストに向いていると言えます。

一方、企業における研究職では、キャリアアップに伴って管理職となっていき、研究の最前線で手を動かすというよりは経営判断や事業統括をする立場になっていくことが多いです。その点、将来的に大きな研究チームを動かし、研究を社会実装させたい人は企業研究職に向いていると言えるかもしれません。また、キャリアパスに安定を求める場合も、長期雇用が前提の企業就職が合っているかもしれません。

合わせて「研究職に向いてる人の特徴4つと求められている能力」という記事も読んでいただくと、参考になるでしょう。

まとめ

今回の記事では、アカデミアの言葉の定義や、アカデミックポストと企業研究職の違いなどを解説してきました。

アカデミックポスト・企業研究職の特徴やメリット・デメリットを紹介しましたが、どちらを就職先として選択するのかは、自分のキャリア(もしくは人生)への考え方に合わせて早めに考えておきましょう。

もちろん、アカデミアから企業に移る人もいれば、企業からアカデミアに戻ってくる人もいます。自分の可能性を狭めることなく、広い視野を持って自身のキャリアを考えていきましょう

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