博士号取得後、ポスドクとして研究を続ける人の年齢層や、その後のキャリアについて気になる人は多いと思います。
- ポスドクの平均年齢は?
- ポスドク期間は何歳まで続く?
- ポスドクに年齢制限はある?
- 高齢ポスドク問題とは?
このような情報を、記事にまとめました。
日本に約1.6万人いると言われているポスドクの実態について、データに基づいて解説していきます。
「ポスドク問題」など、ネガティブな情報が耳に入ることもあると思いますが、優秀なポスドクが社会で活躍できるよう、国や企業が積極的な動きを見せている面もあります。
また、どれだけ研究業績があっても、任期付きの研究者であれば「ポスドク」として括られます。
研究者としてのキャリアプランを考えるうえで、参考にしてみてください。
ポスドクとは?
ポスドクとは、ポストドクターの略です。
ポジションとして「Postdoctoral Researcher」「Postdoctoral fellow」「ポスドク研究員」とも呼ばれ、博士号取得後の任期付き研究職ポジションのことを指します。
研究者を目指す人にとって、ポスドクとして研究成果をあげることは「第一ステップ」となっています。
基本的に、ポスドクは短期間の任期制ですが、なかなかキャリアアップできずに不安定な働き方をする人もいます。優秀な博士人材のキャリア形成が難しくなっている状態を「ポスドク問題」と呼ぶことがあります。
詳しくは「『博士研究員(ポストドクター)』とは?気になる活動内容や給与などを解説」の記事で解説しています。
ポスドクの年齢層・平均年齢・期間など
ポスドクの年齢層・平均年齢・期間などをデータを交えて紹介していきます。
以下、科学技術・学術政策研究所による「 ポストドクター等の雇用・進路に関する調査(2018年度実績)」を参考としています。
年齢層の分布
ポスドクの年齢層分布を見てみましょう。
- ~29歳:13.5%
- 30~34歳:35.9%
- 35~39歳:21.8%
- 40~44歳:12.0%
- 45~49歳:7.0%
- 50歳以上:9.8%
30代のポスドクが半数以上を占めています。
もちろん、中には社会人を経て博士課程を修了した人もいますので、40~50歳以上のポスドクも少なくありません。
高齢化の傾向が見られる(高齢ポスドク問題)
上記のポスドク年齢分布ですが、実は前回調査と比較すると、高齢化の傾向が見られます。
39歳までの若手ポスドクの割合が「5.1%減少」した分、40歳以上のポスドクの割合が「5.1%上昇」しているのです。
「高齢ポスドク」の年齢に定義はありませんが、50歳以上になっても正規雇用に就けずに、ポスドクとして研究を続けている人は増加傾向にあるようです。
しかしながら、チームや研究機関によっては、高年収で好待遇のプロフェッショナルであっても、立場上「ポスドク」という扱いになることがあります。
平均年齢は37.5歳
ポスドクの平均年齢は37.5歳です。(男性は37.2歳、女性は38.1歳)
前回調査では36.3歳だったため、ここでもポスドクの高齢化がデータとして表れています。
ちなみに、ポスドクの男女比はおおむね7:3と、男性が多いです。
ポスドク期間が長い?何歳まで続くのか
ポスドクとして働く期間は、人によって大きな違いがあります。
順調に研究成果をあげられれば、3年未満でパーマネント職にキャリアアップする人もいますし、自分の能力を活かせる企業へ就職する人もいます。その一方、5年以上ポスドクとして働き続ける人も少なくありません。
一つの目安として、文部科学省「ポストドクターの正規職への移行に関する研究」によると、ポスドクが博士課程修了から正規職(任期の定めのないポスト)に移行するまでの期間は、平均で「4.82年」です。
ちなみに、ポスドクの契約期間は「1年」が46.6%で最も多く、次いで「雇用関係なし」が22.8%。複数年の任期をもらえるポスドクは15.6%と、多くありません。
単年度契約を更新したり、複数の研究室を渡り歩いたりしながら、正規職を目指すのが一般的なキャリアパスとなっています。
ポスドクから正規雇用への移行率は
ポスドクから任期の定めのない「正規雇用」に移行した割合は、6.3%となっています。
約8割のポスドクが、次年度もポスドクを継続。ポスドクから教員職になる人でも、いきなり正規雇用されるのは難しく、任期付きの職に就くことが多いようです。
アカデミアでの研究職にこだわりすぎず、企業就職などを視野に入れるポスドクが増えれば、正規雇用への移行率はもう少し改善する可能性があります。
近年は日本企業でも積極的に博士人材を求めているため、正規雇用への移行率は上昇していくかもしれません。ポスドクから企業の研究職への就職活動については、博士情報エージェントなどの専門的な就職支援サービスを利用することも有用です。
※学振PD(ポスドク)の年齢制限は撤廃
ちなみに、日本学術振興会の特別研究員制度(PD・SPD・RPD)では、平成26年度から応募資格の「年齢制限」を撤廃しています。
35歳までという基準がなくなり、社会経験を積んだ後に博士課程に進学した人や、博士課程に長く在籍した人も応募できるようになっています。
※ただし、「博士の学位を取得後5年以内の者」という制限はあります。
ポスドクのキャリアに関する前向きな動きも
ここまで、ポスドクのキャリアについて、年齢や雇用期間、正規雇用への移行率などを見てきました。
一見するとネガティブなデータのように見えますが、実際には一部業界で博士人材を求める声は強くなっており、また、国も支援策を整備しています。
具体的には「博士は就職できない/厳しいって本当?なぜ?正規雇用の割合&将来の展望」の記事後半で紹介していますが、優秀な博士学生およびポスドクは、年齢に関係なく採用したい…という需要が増えてきています。
国としても、様々なフィールドでの博士人材の活躍促進に取り組んでいます。
「創発的研究支援事業」など若手研究者の挑戦的な研究を促進する制度を増やし、「テニュアトラック制」の促進で任期の定めのないポストへ就く人も増やそうとしています。また「卓越研究員事業」など研究者のキャリアパスの多様化を促進しています。
高度な研究能力を持ったポスドクが、その能力を十分に発揮できるような環境整備が進められています。自ら、キャリアアップのチャンスを掴みに行く姿勢も重要です。
【まとめ】ポスドクは高齢化傾向だがキャリアの選択肢は増えている
今回の記事では、ポスドクの年齢層や期間について、データを交えながら解説してきました。
要点をまとめると、以下の通り。
- ポスドクの年齢は30~34歳が一番多い
- 平均年齢は37.5歳
- ポスドク期間は平均で4.82年
- 優秀な博士人材を採用したい企業は増えている
- 国も博士人材の活躍促進に注力している
ポスドクのキャリアを考える際には、統計データを参考にしつつも、自分自身の判断でキャリアプランを作り上げていくという考え方も重要です。
繰り返しになりますが、優秀な博士人材を求める企業・機関は増えています。自分の資質や能力を活かすことができる環境を、自ら探してみましょう。
博士やポスドクのキャリアプランについては、「博士情報エンジンwakate」のセミナーで詳しく解説しています。参考にしてみてください。
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