研究職になりたい!向いてる人の特徴4つと求められている能力を解説

キャリア

研究職とは、文字通り「特定の専門分野を研究する職業」です。

多くの博士が研究職を目指すことになるわけですが、やはり「博士学生としての研究」と「職業としての研究」には違いがあります。

研究職に向いている人はどのような特徴を持っており、また、どのような能力が求められているのでしょうか…?

研究職についての基礎知識にも触れながら、この記事で詳しく解説していきます!

なお、学部生や修士の人に先にお伝えしておくと、研究職につくためには博士号の取得は前提です。そのあたりの事情も踏まえつつ、「職業としての研究者に求められるスキルや特性」について知りたい人はこの記事を参考にしてみてください。

厚生労働省が定義する研究職とは?

研究職とはどのような仕事なのか、厚生労働省による定義を確認してみましょう。

まず、『令和4年版 厚生労働省編職業分類表』において、「中分類:研究者」は以下2つの「小分類」に分かれています。

  • 自然科学系研究者
  • 人文・社会科学系等研究者

そして、『厚生労働省 職種解説』を参照すると、「自然科学系研究者」の仕事概要が書かれています。

研究所、研究室などの研究施設において、専ら理学、工学、農学、医学、薬学など自然科学に関する基礎的・理論的研究、試験、検定、分析、鑑定、調査などの専門的、科学的な業務に従事する者をいう。

人文・社会科学系等研究者についても、専門的な研究をするという点においては全く同じことが言えます。

研究職としてのキャリアは大きく3つ

研究職の具体的な所属先は、大学等の高等教育機関・公的研究機関・民間企業の3つが代表的です。以下、簡単に紹介します。

①大学等の高等教育機関

大学や大学院、高専などの教育機関に所属しながら研究を行います。

主に、学問の進歩や新しい理論の構築、未知の領域の探求などに重点を置いています。一方、教育機関であるため、教育活動への貢献も一定程度求められ、次世代の研究者や専門家を育成する役割を担います

大学では一般的に、助教、講師、准教授、教授と昇任していきます。

②公的研究機関

国や地方自治体が所管する研究機関で働く道もあります。

各機関がターゲットとする特定の領域に対する科学的、もしくは技術的な解決策を見つけることを主な目的としており、基礎研究から応用研究、開発研究まで幅広く行われています。その成果は社会や産業の発展に貢献することが期待される傾向があります。

アカデミアと異なり、教育の側面はありません。

③民間企業

企業に所属する研究者は、新しい製品やサービスのための開発研究や、既存技術の改良のための研究等を行います。

研究成果が製品やサービスに組み込まれ、実際に社会で使用されることが主な目的となるため、商業的価値や市場ニーズを意識した具体性のある成果が期待される傾向があります。

しかし、近年は企業研究職でも10年、20年先を見据えた長期的な研究を進めるケースも増えているようです。

また、最終的にプレーヤーとしてではなく、マネジメント側(管理職)に回ることもあります。

研究職に向いている人の特徴4つ

研究職は、専門的な知識高度で幅広いスキルが求められる仕事です。それだけでなく、精神面の強さも重要になってきます。

これらはもちろん博士学生にとっても必要なのですが、特に「職業人としての研究」において必要な項目をピックアップしました。

以下、研究職に向いている人の特徴を4つに絞って紹介していきます。

①好奇心と柔軟性

研究者にとって好奇心と柔軟性はそれぞれ重要な資質ですが、その両方がどちらも高い人は研究職に向いてると言えるでしょう。

特に近年は近接する領域、あるいは一般的には関連性の低い領域との融合研究も活発になっています。異分野のトレンドにも幅広く知的好奇心を持ちつつ、ひとつの問題に対して多角的にアプローチして解決策を見出す柔軟な思考力が必要です。

②レジリエンス

研究成果をあげるには、長期にわたる失敗と試行錯誤の連続と言えます。

失敗から学び、継続して問題解決に取り組む「粘り強さ」が求められるのは博士学生も同じです。しかし、職業としての研究においては、さらにスケジュール・予算などの制約条件が強くなり、そのうえで具体的な成果が求められます。

粘り強いというだけでなく、ストレスや逆境に強い「レジリエンスのある人」が研究職に向いています。

③創造性・イノベーション

また、創造性とイノベーションにあふれた人は研究職に向いています。

博士課程は、ある意味ではお金を払いながら指導教員のもとで研究を行う立場です。それと比較すると、研究職では「社会的価値」を生み出すことがシビアに見られます。

職業として研究を続けていく場合には、既往研究の応用・発展だけではなく、新たなアイデアやアプローチをゼロから生み出してイノベーションを起こすことが求められます。

④コミュニケーション能力・チームワーク

博士課程における研究は、学生という身分でありながらも個人に裁量権があり、ある程度「個人プレー」で研究を進めていくことも可能です。

しかし、研究職においては、研究の過程や成果を他者と共有し、意見交換を活発にさせながら成果をあげていくコミュニケーション能力・チームワークが必要不可欠になります。

組織に属して職業として研究をしていく以上、リーダー・先輩・後輩・技術スタッフ・事務の人などと協力的に円滑なコミュニケーションをとることも、必要なスキルの一つです。

また、国際的な研究コミュニティにおいては、多様な文化背景を持つ海外の研究者たちとの交流も求められるため、より実践的な言語能力も必要となるでしょう。

以上、研究職に向いている人の4つの特徴を紹介してきました。

なお、本noteでは『博士課程に向いている人/向いてない人とは?』という記事も書いています。博士学生と研究職で、どのような点が違うのかも参考にしてみてください。

研究職に求められる能力とは?

博士学生にとって、研究職は花形的ポジションです。採用数には限りがあり、当然ながら求められる能力も多岐にわたります

ここで研究職に求められるスキルをひとつひとつをリストアップしても、あまり有益ではないため、文部科学省が公表している『世界トップレベルの研究者の養成を目指して』という資料(平成14年)の中で、現在でも重要となる点をピックアップします。

・独創性、創造性、未知のものへのチャレンジ精神、豊かな感性、主体的な課題設定能力や論理的思考力、国際的なコミュニケーション能力などが求められる

・自らの専門分野にいたずらに閉じこもるような蛸壺的な専門性ではなく、周辺の専門分野や全く異なる専門分野を含む多様なものに関心を有し、既存の専門の枠にとらわれないものの見方をしながら自らの研究を行っていく能力が特に求められる

・一般論として、欧米のトップクラスの研究者と比較して、日本の研究者に不足しているのは、興味関心やものの見方の幅広さ、自らの専門分野をも変化させていく柔軟性である

・異分野の融合や新たな分野の創出の観点からは、複数の専門性を有すること(π型)がより望ましいであろう。また、幅広い知識は高い専門性の基盤となるものであるとともに、専門性を複数有することによって知識の幅が広がるという相互の関係にある

・大学、公的研究機関、企業という場の違いによって、トップレベルの研究者に求められる能力に基本的な違いはない

以上が高度な研究職に求められる能力として論じられています。

今後はますます、専門分野への深い知識だけではなく、総合的なトランスファラブルスキルが重要となるでしょう。

その点、産学協働イノベーション人材育成協議会が提案しているトランスファラブルスキル「RISE」も参考になるかもしれません。

研究職に関するよくある質問【Q&A】

最後に、研究職に関するよくある質問3つと、その回答を紹介します。

Q.研究職のメリット・やりがいは?

研究職ならではのメリットは、やはり「自分の興味関心のある専門分野に深くかかわることができる点」でしょう。

研究が好きで探求心や好奇心を持ち続けている人にとっては「天職」と言えそうです!

また、自分の研究が社会で活用されたり、学術的貢献を果たしたりすると、大きなやりがいを感じることができます。

Q.研究職になるためには博士号が必要?

ポストによって多少の違いはあるものの、博士号を持っていることが最低条件というポジションも少なくありません

企業によってはポテンシャル採用として修士卒を採用していますが、高度な専門性が求められる研究になればなるほど、即戦力の博士号取得者が求められる傾向が強いです。

研究者としてキャリアを築いていくことを真剣に考えるなら、博士号取得は必須と言っても過言ではありません。

Q.研究職は他分野に転職しにくい?

これまでは「専門分野に特化した研究職は、他分野に転職しにくい」といった風潮も一部ではあったようです。

しかし、研究職の論理的思考力・課題解決力などのスキルは公官庁や企業において見直されており、期待も大きなってきています。

文部科学省が「博士人材活躍プラン』を公表したのも、そのひとつの表れです。

詳しくは「文科省が「博士人材活躍プラン」を発表!2040年にドクター3倍へ」という記事で解説しましたが、今後はますます研究力のある人材が多様なキャリアパスで活躍する時代となることでしょう。

【まとめ】博士課程の研究と、職業としての研究には違いがある

今回のブログ記事では、研究職に向いている人の特徴4つと、特に求められている能力について解説してきました。

博士課程は学生の身分ではありますが、日々の活動は「研究職と同質の作業」と言えます。しかし、「職業としての研究者」においては、新たな価値を生み出し、研究を通して社会に貢献する「プロ意識」と「高度なトランスファラブルスキル」が求められます。

最後になりますが、研究職は採用枠が限られています。

修士および博士課程において、研究実績の積み上げや総合的なスキルアップが重要となるでしょう。

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