皆さん!育志賞というものをご存じでしょうか?
博士学生を支援・奨励するために設立された賞ですが、学振や奨学金とはひと味もふた味も違う、「名誉ある賞」なのです!
- 育志賞とは?
- 育志賞の選考方法は書類と面接?
- 育志賞の倍率は?受賞はどのくらいすごい?
上記のような疑問に答えていきます。
学振などと比較すると詳細な情報が出回っていない「育志賞」について、その概要・申請条件・応募方法・選考方法などを詳しく解説していきます!
育志賞とは?概要と目的を紹介!
育志賞は、平成22年度(2010年)に創設された比較的新しい賞です。
平成21年、現上皇陛下の天皇御即位20年に当たり、社会的に厳しい経済環境下で研究に励む若手研究者を支援することを目的として、日本学術振興会が上皇陛下から賜った御下賜金をもとに創設されました。
- 社会的に厳しい経済環境の中で、勉学や研究に励んでいる若手研究者を支援・奨励する
- 将来、我が国の学術研究の発展に寄与することが期待される優秀な大学院博士課程学生を顕彰することで、その勉学及び研究意欲を高め、若手研究者の養成を図る
以上のような意義・目的で、日本全国の博士課程学生から16名程度を選考し、支援・表彰が行われています。(参考:日本学術振興会育志賞の概要)
なお、「育志賞」という名称には、研究者を目指す若い方々の「志(こころざし)を育(はぐく)む」という深い意味が込められているようです。
育志賞を受賞した場合の奨励金は?
育志賞の受賞者には、研究資金の提供や研究環境の整備を目的として、学業奨励金110万円が贈呈され、受賞者が研究の発展のために自由に使用することができます。
また、受賞者は希望により、育志賞受賞の翌年度から特別研究員等に採用され、研究奨励金等を継続的に貰うこともできます。博士課程における金銭面の不安を減らし、研究活動に専念できますね。
さらに、賞状、賞牌(記念メダル)も贈呈され、令和6年2月に挙行された授賞式には秋篠宮皇嗣同妃両殿下もご臨席されました。大変に名誉のある賞です。
育志賞の応募条件と選考について
育志賞の対象分野は、人文学、社会科学及び自然科学にわたる全分野で、幅広い学問領域から候補者が選ばれます。
育志賞に応募できる対象者
育志賞の選考対象となる候補者は、以下2つの条件を満たす必要があります。
① 我が国の大学院博士課程学生(海外からの留学生を含む)であって、当該年度の4⽉1⽇において34歳未満の者で、当該年度の5⽉1⽇において次の1)から4)のいずれかに該当する者(5月1日に休学中の者の扱いについては、※参照)
1)区分制の博士後期課程に在学する者
2)一貫制の博士課程3年次以上の年次に在学する者
3)後期3年のみの博士課程に在学する者
4)医学、歯学、薬学又は獣医学系の4年制博士課程に在学する者※ 5月1日に休学中の者については、11月1日までに復学を予定している場合には、推薦できます。この場合は、当該年度の11月1日において、1)から4)のいずれかに該当する必要があります。
② 大学院における学業成績が優秀であり、豊かな人間性を備え、意欲的かつ主体的に勉学及び研究活動に取り組んでいる者
引用:日本学術振興会育志賞の概要
上記の通り、博士課程の在学者が対象となっており、修士学生やポスドクは応募できません。
そのうえ、博士学生がだれでも応募できるわけではありません。応募条件を見てみましょう↓
育志賞の応募には推薦が必要
育志賞は、自薦ではなく他薦のみを受け付けており、大学長推薦、または学会長推薦が必要となります。
ちなみに、大学長推薦は、人社系、理工系、生物系各2名、その他に分野を問わず2名の計8名までが上限になっており、学会長推薦は2名までです。(※それぞれ、男性のみの場合は各1名まで)
学振のように、本人の意向次第で応募できるわけではないことを確認しておきましょう。
育志賞の選考は書類および面接
育志賞の選考の流れは、おおむね以下の通りです。
- 推薦依頼:3月
- 推薦書受付:5月末
- 書面選考:6~10月
- 面接選考:11月
- 選考委員会:1月
- 授賞式:2月
育志賞の選考方法ですが、まずは書類審査にて面接選考に進む学生を選びます。
書類審査を通過した学生は、面接によって選考され、最終的に受賞候補者の分野や性別の割合も勘案しながら、受賞者が決定されます。
(※参考:育志賞・募集要項)
育志賞の面接対策とは?
過去に育志賞の選考を経験した学生の体験談を、いくつか箇条書きにて紹介させていただきます。
- 面接の2週間前にレジュメと面接資料を提出
- 面接は発表が7分、質疑応答が18分ほどだった
- 研究の中で、特に自分が主体的に取り組んだ部分を質問される
- 自分の専門分野に近い人が一人はいるので、一般的な内容と専門的な内容の両方をバランスよくプレゼンするのがおすすめ
- 受賞者はみな「面接の手応えのようなものはなかった」という感覚
学振などと比べて、特に大きな違いがあるわけではありません。
自分の研究内容を効果的にプレゼンし、質疑応答に丁寧に答えられるように事前練習しておくと、自信を持って挑めることでしょう。
なお、上記内容はネット上の体験談をピックアップしています。気になる人は「育志賞 面接」などで検索してみましょう。
育志賞の選考倍率は?受賞したらすごい?
育志賞は、毎年16名程度の受賞を目安にしており、実際にこれまで16~18名の受賞者数で推移しています。
厳密な選考倍率は明らかにされていませんが、日本学術振興会の「第14回(令和5(2023)年度)日本学術振興会 育志賞 受賞者決定について」というページでは、推薦された学生の人数が書かれています。
- 大学長推薦:120名
- 学会長推薦:61名
- 重複を除いた合計人数:170名
そして、令和5年度は18名の受賞者が決まりましたので、選考倍率は「約9.4倍」ということになります。
また、そもそも大学内で推薦を受けるための「事前選考」を行っていることもありますので、トータルで考えたときの倍率は相当に高くなるはずです。
学振DCの平均採択率が18~20%(倍率5倍)という事情を踏まえると、やはり育志賞の受賞難易度はかなり高いと言えそうです。
いずれにしても、博士課程学生にとって「日本最高峰の賞」であることには違いなく、受賞者はもれなく「すごい!」と称賛されることでしょう!
育志賞の実績(受賞者の業績)は?
過去に育志賞を受賞した人の中で、最も知名度が高いのは社会学者・作家の古市憲寿さんでしょう。
古市憲寿さんは、2010年度に『少子高齢化に関する社会学的研究』というテーマで育志賞を受賞しています。特に、社会学的な観点から日本の人口動態や家族構造の変化を分析し、その影響を探る研究で高い評価を受けたそうです。
現在もテレビ番組に出演し、社会派芸能人として活躍されています。
【まとめ】育志賞は博士学生にとって最も栄誉ある賞!
今回のブログ記事では、博士課程学生にとって最も栄誉ある賞である「育志賞」について、その申請条件や選考方法について解説してきました!
要点をまとめると、以下の通り。
- 育志賞は2010年度にスタートした比較的新しい賞
- 受賞者には学業奨励金110万円が贈呈され、翌年から学振を貰うこともできる
- 育志賞は大学長か学会長による推薦が必須条件
- 応募人数に対する倍率は約9.4倍
育志賞は、研究資金の獲得だけでなく、研究者としての実績、受賞者コミュニティでの繋がりなど、長期的なキャリア形成においてもプラスの影響を与えてくれるでしょう。
育志賞の受賞は容易なものではありませんが、推薦されるチャンスがあれば、積極的に挑戦してみましょう!
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