大学・大学院の研究費は、どこから拠出されているのでしょうか。
- 大学院の研究費ってどこから出る?
- 日本の研究費は少ない?
- 科研費の仕組みと申請方法は?
このような内容を、記事にまとめました。
まず、研究室における「研究費の財源」は主に4つに分けられます。
「大学から研究室への配分」「競争的資金(科研費など)」「企業との共同研究」「その他、民間助成金」の4つの方法を活用することになります。
日本では、大学から研究室に一律に配分される金額が少なく、最低限の研究活動と、研究室運営の維持だけでも精一杯な状況が多いです。そのため、研究者は自ら申請書を提出して外部から研究費を獲得しなければならないのです。
博士学生・ポスドク個人の立場では、「日本学術振興会(学振)」の特別研究員(DC1/DC2/PD)などに応募して研究費を得ることができます。
今回の記事では、大学・大学院の研究費、そして研究者個人の研究費はどこからもらうことができるのか、解説していきます。
研究費はどこから出るのか?
大学・大学院の研究室において、研究費は、以下4つの財源があります。
- 大学からの配分
- 競争的研究資金(科研費など)
- 企業との共同研究
- その他、民間助成金
それぞれ、見ていきましょう。
大学からの配分
最も基本となるのは、大学からの研究費の配分です。
所属学生の人数や、過去の実績などに応じて、大学予算の一部から各研究室へ、支給されます。
ちなみに、以下のような名称で、国から大学に助成金が入っています。
- 国立大学:運営費交付金
- 私立大学:私学助成金
この国からの助成金が減少傾向にあるため、大学の財政に余裕がないケースが増えています。
その結果、大学内部からもらえる研究費は雀の涙…という研究室も多いようです。
競争的研究資金(科研費など)
競争的研究費(競争的資金、競争的研究資金とも呼ぶ)とは、研究室に属する個人が申請書を提出し、専門家の審査によって採択されたら、補助金が支給される仕組みのこと。
最もメジャーなのは、文部科学省による科学研究費補助金(科研費)です。
その他にも、「CREST」「さきがけ」など、審査機関が「このような内容の研究に補助金を出します」という募集を行う制度もあります。
十分な研究費を得るため、研究者が自ら「競争的資金」を獲得するのが一般的となっています。なお、科研費の詳細については、後ほど改めて触れます。
企業との共同研究
企業との共同研究、受託研究によって、研究費をもらえるケースもあります。
民間企業にとって魅力的な研究テーマであれば、声がかかるかもしれません。また、教授と企業のコネクションによる共同研究も少なくないようです。
ただし、短期間で収益に繋がる、「すぐ役に立ちそうな研究」が重視される傾向にあります。
その他、民間助成金
研究費を得るため、民間の助成金を活用することもできます。
公的基金にもとづかない、民間の財団法人や団体も助成金を公募しています。
近年では、「academist(アカデミスト)」に代表される、学術系クラウドファンディングを利用して研究資金を得るケースも増えているようです。
以上、研究費はどこから出ているのか、主な4つの財源を紹介しました。
日本の研究費は少ない?削減傾向…
日本の研究費は少ないという問題提起の声があります。
実際、UNESCO統計のデータ「研究者1人当たりの研究開発費ランキング」によると、日本は世界で16位。
金額ベースでは、米国、中国に次ぐ3位にランクインしていますが、上位2か国とは3倍近い差があります。
また2004年度に国立大学が法人化されて以降、運営費交付金は削減傾向となりました。現在は下げ止まっているものの、増額される見通しは立っていないのが現状です。
その分、「競争的資金」の獲得に奔走する研究者が増えているのです…。
ここで、先ほど紹介した、競争的資金の「科研費」について、もう少し詳しく見てみましょう。
【科研費】どこにどのように申請する?
競争的資金の中でも、最も一般的な「科研費」ですが、どこにどのように申請する仕組みになっているのでしょうか?
科研費の申請方法
科研費を得るためには、日本学術振興会(JSPS)に申請書を提出する必要があります。
JSPS公式ページにて公募要領や研究計画調書をよく確認して、申請しましょう。
なお、最近は、「科研費申請専門」のウェブサイトや、専門書まで登場しているようです。
科研費申請のスケジュール
科研費申請のスケジュールは申請先によって若干異なりますが、主なケースを紹介します。
- 7~8月:公募
- 9~10月:申請・受付
- 2~3月:結果通知
学内での提出は、これよりも前倒しになるでしょう。
最新のスケジュールについては、JSPS公式ページを確認しましょう。
科研費の採択率
科研費の採択率は20~30%程度と言われています。
科研費がもらえないと金銭的に成り立たない研究室もあるため、「性急に役に立ちそうな研究テーマ」に軸が置かれるケースも出ているのは問題点。
ちなみに、どの研究者が、どのような研究内容で、いくらの研究費を受け取っているのかは、KAKENのページにて公表されています。
研究者個人が研究費を獲得する方法は?
ここまでは、研究室における財源4つについて見てきました。
博士・ポスドクなどの研究者個人が、研究費を獲得する方法はあるのでしょうか?
結論としては、「学振」の特別研究員(DC1/DC2/PDなど)や、上述の「科研費」への申請が一般的です。
学振の採択率は15~20%ほどの狭き門ですが、通過すれば、研究奨励金として月額20万(年額240万円)に加え、科研費として年額150万円以内が支給されます。
日本学術振興会のホームページのスケジュール表にて、最新の流れを確認してみましょう。
【まとめ】研究費の主な財源と問題点
今回の記事では、大学の研究費がどこから出ているのか、その仕組みや問題点について解説してきました。
要点をまとめると、研究室が研究費を得る方法は大きく分けて4つ。
- 大学からの配分
- 競争的資金(科研費など)
- 企業との共同研究
- その他、民間助成金
大学からの配分は金額が少なく、科研費の獲得には厳しい競争があります。共同研究は一部の研究テーマのみ…。
そんな中、民間助成金やクラウドファンディングなど、研究費獲得のチャンスが広がっていることも事実です。
国家レベルで日本の研究を後押しできる仕組みが整うことを願いつつ、現状では、研究費を得るためのチャンスを自ら掴んでいくしかないでしょう。
具体的には、博士学生であれば、まずは「学振(DC1/DC2)」への応募に挑戦してみるのが良いでしょう。採択されれば予算的制限を受けずに、ノビノビと研究を進めることができますね。
この記事で、研究費の実態がどのようなものか、イメージを掴む一助となっていれば幸いです。
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