大学院で磨く!トランスファラブルスキルの具体例/一覧【博士向け】

キャリア

大学院、特に博士課程での研究・教育の現場において、「トランスファラブルスキルの習得」が注目されています。

  • トランスファラブルスキルとは?
  • トランスファラブルスキルの具体例/一覧は?
  • なぜ大学院(博士課程)で重要視されているのか?

このような情報を、ブログ記事にまとめました。

トランスファラブルスキルとは、どんな場面でも普遍的に使える能力のことです。

博士は、自分の研究を突き詰めていく中で研究以外でも活かせる本質的な能力を身につけ、高度な人材になることが求められています。

本記事では、大学院で獲得することが期待される「トランスファラブルスキル」について詳しく解説します。特に、博士課程でどのようなトランスファラブルスキルを、どのように習得できるのか、具体例や一覧を示しながら紹介していきます。

トランスファラブルスキルの定義

Transferable Skillsとは、日本語に訳せば「移転可能な技能」となりますが、そのままトランスファラブルスキルと使われることが多いです。

学問や職業の枠を超えて応用できるスキルのことで、欧州科学財団の報告書では、以下のように定義されています。

「1つの文脈で学んだスキル、例えば、研究を行う上で学んだスキルの中で、他の状況、例えば、研究であれ、ビジネスであれ、今後の就職先において有効に活用できるようなスキルのことである。そしてまた、トランスファラブルスキルがあれば、学問領域及び研究関連のスキルを効果的に応用したり、開発したりすることができるようになる」

(引用)文部科学省:大学院教育の体質改善について

※なお、トランスファラブルスキルは「ポータブルスキル」と呼ばれることもありますが、意味は同じです。

トランスファラブルスキルを大学院(特に博士課程)で磨くべき理由は?

博士課程でトランスファラブルスキルを磨くことは、研究者としてキャリア形成していく上ではもちろんのこと、研究者以外のどのようなキャリアを形成していくにしても、大きなメリットがあります

アカデミアのポストがなかなか増えない中、トランスファブルスキルを身につけることで自分の将来の可能性を大幅に広げられるでしょう。

「VUCA」とも言われる現代社会において、正解の見えない問いに対して試行錯誤する人材が必要となります。博士課程で研究を遂行する中で得られる「貴重かつ特別な経験」から、トランスファブルスキルを身につけることが求められています。

文部科学省も「移転可能なスキル」に注目している

文部科学省も、「大学院教育の体質改善について」という資料の中で、大学院におけるトランスファラブルスキル習得の重要性について言及しています。

知のプロフェッショナルとして、大学院生には「自ら課題を発見し仮説を構築・検証する力」「社会を先導する力」「様々な場面で通用するトランスファラブルな力」が求められるとしています。

トランスファラブルスキルの具体例・一覧

文部科学省が「科学技術でイノベーションの可能性を拓くために」という資料で触れている、トランスファラブルスキルの具体例/一覧を提示します。

【研究に関するスキル】

  • 研究方法などの理論的知識
  • 情報検索能力
  • 分析力
  • 批判的思考
  • 問題解決能力
  • 探求心
  • イノベーション

【個人の能力】

  • 自信
  • 責任感
  • 準備と優先順位
  • ワークライフバランス
  • 時間管理能力
  • キャリアマネジメント
  • 専門性の向上の継続

【研究ガバナンスと組織】

  • 健康と安全
  • 倫理、道義と持続可能性
  • 知的財産権と著作権
  • 研究戦略
  • リスクマネジメント
  • 資金管理
  • 資金源の創出

【関わり合い、影響、インパクト】

  • チームワーキング
  • リーダーシップ
  • コミュニケーション能力
  • 出版
  • 一般市民との関わり
  • 起業

以上がトランスファラブルスキルの具体例・一覧です。では、これらのトランスファラブルスキルを、博士学生がどのように習得していくのでしょうか?

大学院:博士課程でどのようにトランスファラブルスキルを磨くのか?

大学院・博士課程でトランスファラブルスキルを磨く方法は、実はシンプルです。

結論としては、熱心に研究活動に取り組むことが、様々なスキル習得に繋がっています

以下、博士課程の研究活動において、どのようにトランスファラブルな力を身につけられるのか…詳しく見てみましょう。

論文の執筆

論文執筆は、博士課程で最も重要なタスクのひとつです。

論文投稿や、博士論文を仕上げる過程で、多くの基礎的かつ本質的なスキルが養われます。特に「文章力」「分析力」「問題解決能力」「情報検索能力」「時間管理」などのスキルを磨くことができます。

共同研究、他人の研究への参画

博士学生は、他の研究者やチームメンバーと共同研究をしたり、実験に協力したりする機会もあります。

メンバーとの対話の中で「コミュニケーション能力」「チームワーキング」「交渉力」「リーダーシップ」「研究戦略」「プロジェクト管理能力」「資金管理」などのスキルが磨かれます。

ディスカッション、プレゼンテーション

博士課程ではラボ内でディスカッションやプレゼンテーションをする機会も多いでしょう。

他人と意見交換をしたり、自分の研究成果を簡潔に伝えたりすることで、「コミュニケーション能力」「プレゼンテーション能力」「傾聴力」「質問力」「ファシリテーション力」「資料作成能力」「批判的思考」「自信」といった多くのトランスファラブルなスキルを高めることができます。

学部生の指導・ラボ運営の雑務

博士学生は、ラボ運営の中心的役割としても期待されています。

担当教員からの指示で雑務をこなすこともあれば、後輩学部生へ指導することもあります。

雑務や指導をする中でも、「チームワーキング」「マネジメント力」「調整力」「対話力」「関係構築力」「巻き込み力」「交渉力」「責任感」などのスキル・特性を磨くことができます。

その他、博士号取得にあたって必要になるすべての経験

その他にも、博士号取得にあたって、様々な場面で本質的なスキルや考え方・行動特性を身につけることができます。

語学力」「言語化スキル」「スピーディーな対応力」「判断力」「統計知識」「向上心」「柔軟性」「探求心」「準備と優先順位」「知的財産権と著作権」「健康と安全」「倫理、道義と持続可能性」「資金源の創出」「起業」「一般市民との関わり」など、研究活動の中で、実に多様なスキルが磨かれることでしょう。

「経験の言語化」で効率的に身につける

博士課程において、上記のようなトランスファラブルスキルを身につけることができるのですが、そのような経験を博士学生自身が「言語化」することが重要です。

本質的なスキルとは、一朝一夕で習得できるものではありません

日々の研究活動の中で、「自分は今、このようなスキルを習得しているのだ」「このスキルは、あの場面でも使えるだろう」など、トランスファラブルスキルの存在を意識し、「経験を言語化」することで、自分の成長に敏感になることができるでしょう。逆に、自分に不足しているスキルを認識することも重要かもしれません。

粘り強く研究活動を進める中で、自分のトランスファラブルスキルは着実に向上しているはず…!それを自覚し、自己分析することで、より効率的に本質的なスキルを向上させられるでしょう。

【まとめ】博士課程でトランスファラブルスキルを磨こう!

今回の記事では、大学院・博士課程におけるトランスファラブルスキルについて解説してきました。

博士学生として熱心に研究に取り組むことが、多種多様なトランスファラブルスキル習得に繋がります。

先行き不透明な現代だからこそ、ランスファラブルスキルを身につけた博士人材が求められています。今後、博士は、様々な文脈で力を発揮できる貴重な人材となっていくはずです!

当然、博士個人のキャリアにも大きなアドバンテージになります。積極的に研究活動に取り組むことで、自身のトランスファラブルスキルを磨きましょう!

なお、「博士情報エンジンwakate」では博士のキャリア支援として、各種セミナーを多数開催しています。参考にしてみてください。

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