博士課程では、やむを得ない事情で中退を選択する人が少なくありません。
そんなとき、不安になるのは就職やキャリアについてだと思います。
- 博士課程を中退する人の割合、理由は?
- 博士中退によって就職や内定にどのような影響が出る?
- 博士課程を中退しても就職する方法は?公務員もおすすめ?
このような内容を、ブログ記事にまとめました。
結論としては、博士課程を中退しても、自分のスキルを適切にアピールできれば就職のチャンスはあります。
ただ、一部メディアで「博士中退は就活に悪い影響を与えない」「むしろ年齢の若さがチャンスになる」などと書かれているほど楽観的でもないことは、事実として知っておくべきでしょう。
以下、博士課程の中退と就職というトピックについて、詳しく解説していきます。
博士課程を中退する人の割合は?
まず前提として、博士課程の中途退学を考える人は、少なくありません。
2016年に文部科学省がまとめた調査によると、学部中退率が1.81%、修士課程中退率が3.23%に対して、博士課程中退率は5.63%(すべて昼間部)となっています。
なお、この調査には「博士課程満期退学」の人は含まれていません。純粋な中途退学です。
5.6%という割合を見ると多くない印象を受けるかもしれませんが、人数にすると調査年では3,400人もの博士学生が中退を選択したことになります。
博士課程を中退した人の理由は?
先ほどと同様の文部科学省の調査において、博士課程を中退する人の理由は以下のようになっています。
- 就職:23.98%
- 一身上の都合:17.06%
- 学業不振:8.03%
- 経済的理由:5.42%
上記のほかに「不明」や「その他」という回答も多いですし、複合的な要因でやむを得ず中退する人もいると思います。
なお、中退する人の4人に1人は「就職」を理由にしておりますが、この中には「(その他の理由から中退を考える→)就職活動をする→内定をもらう→中退する」という人も含まれていると考えられます。
また、博士課程を中退して、就職もできずニートのようになってしまうケースもあるのが実情です。
博士課程の中退が就職/キャリアへ及ぼす影響とは?
博士課程を中退した人の就職について考えていきましょう。
まず、当然ながら、博士号取得者や満期退学の人と比較すると、アピールの仕方に工夫が必要になります。
また、「制度面」でエントリーの選択肢が限定されるという問題もあります。
以下、注意するポイントを見ていきましょう。
博士中退の理由は、面接時に必ず聞かれる
企業の採用担当からすると、「なぜ博士課程を中退したのか」が最も気になるはずです。
- 博士を中退したということは、入社後も辞めてしまうのではないか
- 健康上の不安を抱えているのではないか
以上のように見られてしまうのは、仕方がないことです。
そこで、博士を中退した人の就活のポイントは「中退した理由を素直に開示しつつも、前向きな姿勢でアピールすること」になります。
中退した理由を「指導者が悪くて…」と他人の責任にするような発言や、「研究活動が辛くてやる気がなくなった…」といったネガティブに捉えられる説明は避けましょう。
博士中退という決断をしたうえで、「自分はこれからどんなことをして、どうなっていきたいのか」というポジティブな姿勢で就活に取り組むといいでしょう。
新卒採用に応募できないケースも…
博士課程を退学した場合、そもそも就職のエントリーに制限が出る場合があります。
厚生労働省は平成22年に「青少年雇用機会確保指針」を改正し、「3年以内既卒者は新卒枠で応募受付を」という方針をかかげています。
しかしながら、「労働経済動向調査結果の概要(令和4年8月)」によると、既卒者応募が可能だった企業は全体のうち69%、そのうち採用に至ったのは38%というデータがあります。
方針を掲げてから10年以上が経過しているにもかかわらず、既卒者の応募を受け付けていない企業が「31%ある」というのが現実です。
そのため、希望する企業によっては、「中途採用」でエントリーしなければならないケースもありますし、中途採用枠では実務経験が求められることも少なくありません。博士課程を中退した場合、進路の選択肢が狭くなってしまいます。
博士課程を中退するメリットもある?
その一方で、博士課程を中退することで、時間や心に余裕が生まれ、じっくりと就活に取り組むことができます。
自己PRや企業分析などに取り組むことで、就活において自分を魅力的にアピールできるでしょう。企業文化や今後の展開などを研究し、自分の強みをどのように活かせるかまとめておきましょう。
また、研究内容にとらわれることなく広い視野で将来を考えることで、キャリア選択の幅が広がります。今まで考えていなかった活躍の道を見つけられるかもしれません。
なお、中途退学することで、年齢面で多少有利になると捉えることもできます。
博士課程を中退して公務員試験を受ける人も
博士課程を中退した人は、公務員を目指すのも1つの手段です。公務員試験において、学歴は一切関係ありません。
また、多くの公務員試験は30歳まで受けることができますし、「新卒者に限る」「経験者に限る」といった制限もありません。
博士課程を修了してからの挑戦だと年齢面でギリギリになってきますが、中退して早めにキャリアプランを考えることで、公務員試験対策に早いうちから取り組むことができます。
博士課程で身に着けたスキルを活かすことで、公務員としてキャリアを築いていくのも選択肢のひとつですね。
※博士課程には満期退学という道もある
博士課程には、学士・修士とは違って「満期退学」という道があります。
満期退学とは「標準就業年数を経過し、単位をすべて取得しながら、博士論文の提出を完了せずに退学すること」です。
詳しくは「博士課程の満期退学が就職に及ぼす影響」の記事で解説していますが、博士課程の満期退学は、ある程度の社会的評価を受けることができます。
就職の面においても、中途退学者と比較するとスムーズに評価されやすいです。
様々な事情はあると思いますが、休学や留学、研究テーマの変更なども含めてゆっくりと冷静に検討してみましょう。
【まとめ】博士中退は就職に影響がある…慎重にキャリアプランを立てよう
今回のブログ記事では、博士課程を中退することによる就職への影響について解説してきました。
博士課程の中退を考える人は多いのですが、キャリアへの影響は「ある」と言わざるを得ません。
就職活動中に、中退した人が「不当に不利に扱われることはない」としても、「せっかく進学したのになぜ中退したのか」という理由を面接時に追求されるのは避けられません。
また、中退した人は新卒採用に応募できないといった、ネガティブな影響もあります。
「なんとか博士課程の満期退学まで目指せないか…?」という点も含めて、指導教員・先輩・キャリアセンターなどに相談しながら慎重に判断できるといいでしょう。
この記事が少しでも参考になっていれば幸いです。
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